2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Molecular Architectonics: Orchestration of Single Molecules for Novel Function |
Project/Area Number |
25110006
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石田 浩 日本大学, 文理学部, 教授 (60184537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐甲 徳栄 日本大学, 理工学部, 准教授 (60361565)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 表面・界面物性 / ナノ材料 / 物性理論 / 量子井戸 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) embedded Green関数法により半無限表面の表面局在状態に対するRashba効果を調べた。Au(111)の場合、スピン分裂した2バンドが、射影バルクバンドギャップを挟んだ上下のバルクバンドに吸収されて消失すること、波数の増加とともに波動関数の結晶内部への減衰係数が減少するためスピン分裂が非線形を示す事等、薄膜計算では得られない知見が得られた。また、Cu, Ag, Au(111)の表面状態の波動関数の主要成分はp_z軌道であるが、Rashba分裂は、このp_zと混成したd_z2とd_xz (yz)軌道間のSO相互作用の行列要素によって生じることを示した。 (2) A02班高木グループとシリセンに関する共同研究を行った。高木グループがLEEDおよびDFT計算により決定した構造データを用いて、半無限Ag(111)基板上の4x4シリセン単一吸着層の電子構造を調べた。SiとAgとの軌道混成により生じた表面共鳴状態のエネルギー分散関係及び波動関数の空間分布のみでなく、薄膜近似では調べられない表面共鳴状態のエネルギー幅を明らかにした。同じく高木グループとの共同研究により、シリセン単一層とCu(111)表面の間にh-BN層を挟んでSi-Cu軌道混成を減らした系をembedded Green関数法により計算して、シリセンの2次元Diracバンドが保持されることを示した。 (3) 外部ノイズが印加された条件下における分子・ナノ構造体の電気伝導特性を明らかにするため、理論・計算コードの開発を行った。簡単な試験系として、単一量子井戸中の1及び2電子系を考えた。1電子系の場合、定常トンネル電流が負性微分抵抗を示し、中間のバイアス電圧下で極小値をとることを示した。一方、定常電流が極小になるバイアス電圧において、レーザーパルスにより新たに誘起される過渡電流が極大値をとることが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にあるように、本研究は、(1) 薄膜表面モデルによる表面・界面原子構造の最適化、(2) 半無限表面計算による詳細な一電子状態の解明、(3) DFT を越えた多電子計算・外場への分子応答計算、の3研究方法を組み合せて進められる。(1)に関しては連携研究者の森川教授のグループで、van der Waals力を取り入れた計算コードの開発が進んでおり、H27年度から同研究室の濱本助教が本グループに加わることにより、大きな進展が期待できるため。(2)に関しては、表面バンドのRashba分裂の計算を、貴金属、Bi、Sb表面等に対して行い、従来の薄膜計算で得られないに多くの新しい結果を得て、その結果を論文として出版することができたため。またシリセン吸着系に関して、本新学術領域の高木グループとの共同研究により、論文を出版することができたため。(3)に関しては、パルスレーザー場などの外場が印加された条件下における分子・ナノ構造体の電気伝導特性を調べるための具体的なモデルの開発ができたため。これを多電子系に適用することにより、トンネル電子伝導に関して、一電子近似では得られない、電子・スピンの相関効果を調べられる見込みがついたため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 森川教授(連携研究者)の研究室の濱本助教に研究分担者として加わっていただき、吸着分子系の原子構造・電子構造に関する研究を実施する。GGAなど通常のDFT計算では、Homo-Lumoギャップが大きく、基板との共有結合性が弱い有機分子の吸着構造を決めることができない。森川教授と濱本助教は、STATE計算プログラムにvan der Waal相互作用を取入れた吸着分子系の計算を行い成果をあげている。濱本助教の参加により、実験グループとの有機分子吸着構造についての共同研究を進める。 (2) A02班の高木グループから、半無限表面の電子構造計算のためembedded Green関数の計算プログラムを使用したいとの提案があり、同計算コードを使い易くするための改良、マニュアル作成作業などを進めている。尚、現プログラムは、SBZ内のk点に関してのみ計算並列化がされていないため、表面超構造のユニットセルが大きくなり、必要なk点数が減ると並列化のメリットがなくなってしまう。そこでH27年度は、1つのk点の計算を分割して、複数のプロセッサーで並列化できるように計算プログラムを改良する。 (3) パルスレーザー場など時間依存外場下におけるナノ構造体の電気伝導については、H26年度に開発した理論モデルおよび計算コードを、複数量子井戸および複数電子系に拡張する。これによって、電子相関の大きさや電子スピン状態の違いが過度電流の生成に与える影響を明らかにする。さらに、複数井戸の初期電子配置を変化させることによって、Coulombブロッケードの効果が電気伝導に与える影響およびメカニズムを、電子波束の時間依存ダイナミクスの観点から明らかにする。
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Research Products
(12 results)