2015 Fiscal Year Annual Research Report
粗粒デバイスのための新規情報処理アーキテクチャの開拓
Project Area | Molecular Architectonics: Orchestration of Single Molecules for Novel Function |
Project/Area Number |
25110015
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浅井 哲也 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (00312380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大矢 剛嗣 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30432066)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | ゆらぎ / 脳型情報処理 / 確率共鳴 / 情報処理 / 単電子回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は「粗粒素子の回路応用の基礎となるアーキテクチャ設計学の基礎確立」、「分子粗粒素子と同程度の粒度を持つCMOSによる回路動作の実証」、「確率共鳴ゲートを用いた非同期式論理回路の設計手法の確立」、「単一分子素子(粗粒素子)を用いた確率共鳴ゲートの要素回路設計」、「ゆらぎを利用する脳型情報処理の新規開拓」に関する五つの研究を平行して行ない、次年度以降の研究のための基礎を整えた。
また、これまでの成果を受けて、「確率共鳴ゲートを二端子分子素子で実現する回路方式の確立」および「分子素子を組み合わせた小規模・大規模回路の実装」に関する研究を行った。それぞれの進展は順調であり、さらに分子情報処理システムを構築するための新たな方向として、「パルス情報処理」の着想ならびに領域グループ間での共同研究の指針を提示した。具体的には、パルス生成、パルス伝搬および可塑性の機能を分子構造に落し込む方策の調整を行った。A01班小川・田中グループのパルス生成デバイスのモデルをA04赤井班とともに構築(パルス生成デバイスの性質を定性的に良く再現する)し、モデルにおける仮説を実証するために必要な実験の洗い出しを行った。
さらに、研究分担者(大矢)とともに、単一電子回路技術をベースにして、最終的なターゲットである粗粒素子(単一分子素子)の要素回路設計と検証を進めた。具体的には、単一分子素子への適用を念頭に、シンプルな構造で機能発現可能な脳型アーキテクチャや自然・生体模倣アーキテクチャを設計し、コンピュータシミュレーションによる動作検証を行い、その実現可能性を見出した。また、並列して確率共鳴性を持つ回路設計も行い、上記アーキテクチャとの組み合わせにより雑音を利用し回路パフォーマンスを向上させる脳型回路等が実現可能であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度より、粗粒素子の回路応用の基礎となるアーキテクチャ設計学の基礎を整えてきた。研究代表者の発案による「ゆらぎを利用する脳型アーキテクチャ」と「確率共鳴ゲート」を大規模化して回路応用につなげるために、A01-03班の粗粒分子素子の粒度を考慮しながら、系統立てて回路設計ができるよう、全グループにわたる材料・素子の体系化作業を行った。今後、回路設計指針を立てるための重要なデータを得ることができたため、達成度は高いと考える。
また、確率共鳴ゲートを用いた非同期式論理回路の設計手法をほぼ確立し、さらに分子粗粒素子と同程度の粒度を持つCMOSによる回路動作の実証を行った。現時点で分子粗粒素子を回路に組み込むことが困難であったため、作成・制御が容易なCMOS回路(分子粗粒素子の等価回路)を試作して回路動作の実証を行った。CMOS回路の電源電圧を極限まで下げた状態(素子ゆらぎがあわられる状態)での電力評価、安定性評価を行った結果、シミュレーションと同質の低電力動作が得られることがわかった。本研究については、概ね順調に進んでいる。
また、単一分子素子(粗粒素子)のための要素回路設計を行った。研究分担者の専門分野である単一電子回路技術をもとに、確率的情報処理回路の設計と検証を行った。クーロンブロッケードに基づく単一電子回路の設計・シミュレーション技法は単一分子素子にも適用可能であり、これまでの知見を活かして情報処理モデル・回路を構成した。具体的には、過去に構築した単電子確率共鳴ゲート回路、ドミノ論理回路、粘菌に学んだ情報処理回路等を構成し、単一分子素子回路への応用展開について考察した。これら要素回路設計についても概ね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、分子パルス生成・伝搬に関する研究を行なう。分子シフトレジスタ(単電子輸送)のしくみを利用できる可能性があるが、リピータ機能がないことが問題である。A04岸田Gのサイリスタチェーンによるパルス伝搬、大矢Gによる単電子(またはその双対の超伝導)ニューロンから類推される仮想単分子ニューロンチェーンが有力候補として挙げられるが、それらを駆動するためには電源配線が必要である。そのため、A04松本Gは光エネルギーの利用を考えている。なお、分子そのものにより必要なダイナミクスを生成することは難しいと思われ、単分子+別素子(金粒子など)によりダイナミクス(L,C)を作り出す方向を考えている。さらに、シミュレーションベースで非学習系のパルス情報処理デモシステムを作ってゆく。候補となるデモモデルは多数存在する(競合、マクロSR/ネットワークSR(ADC, 位相同期, 高速伝搬, メモリ、他)、同期検出、コントラスト非依存性、ほか)。学習系(シナプス可塑性)については、メモリスタを用いたSTDPベースの例、軸索成長については物理エミュレータによる論理関数の学習デモを行う予定である。
平成29年度は、メモリスタシナプスについては、パルス生成・伝搬系とマージした成果を出すことは目指さず、まずはマージする方向性を決めることが重要である。メモリスタを使ってパルス可塑性を出すためには、メモリスタ+容量+スイッチが必要であり、まずはそれを、モノリシックにデバイス化できるか考えてゆく。また、分子メモリスタへの展開も引き続き検討すべきである。
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