2016 Fiscal Year Annual Research Report
Novel Information Processing Architectures for Coarse-Grained Devices
Project Area | Molecular Architectonics: Orchestration of Single Molecules for Novel Function |
Project/Area Number |
25110015
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浅井 哲也 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (00312380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大矢 剛嗣 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (30432066)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 粗粒素子 / ゆらぎ / 確率共鳴 / リザバー計算 / 単電子・単分子回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子ネットワークのゆらぎを利活用する脳型計算アルゴリズムおよび粗粒素子を用いたアルゴリズム実行のためのアーキテクチャの開拓を行ってきた。個々の粗粒素子のバラツキは大きくても、その集団によりバラツキをキャンセルまたは利用できるようになる。本年度は粗粒素子の集団のバラツキは制御せず、外側の機構において粗粒素子集団のバラツキの特性を活かした機械学習を行うことで機能を発現させる、という考えを導入した。そのためにまず、神経素子に類似したスパイクを発生する分子ネットワークのセルオートマトンモデルを構築した。このモデルはターゲットとする分子ネットワークの重要な性質(スパイク生成、およびNDR特性)をうまく再現する。このモデルのダイナミクスを用いてリザバー計算を行ったところ、リザバー計算の評価において一般的に用いられるデータセット(時間依存性のある時系列データ)を高い精度で学習できることが明かになった。 本研究を通して、リザバー計算の有効性が確認できたが、解決しなければならない問題が2点発生した。一点は、リザバー計算の初期値依存性とダイナミクス再現性である。リザバー計算のために、高い精度で各指向毎に同じ複雑ダイナミクスを生成する必要がある。分子ネットワークの初期値は(電荷を完全に抜くことができれば)揃えることができる可能性がある。もう一点は、実デバイスにおける評価(動作実証)の難しさである。多点電極の形成は可能であるが、(現在のところ)高電圧が必要である。この電圧を数ボルトオーダにまで下げられる予備研究報告があるため、この問題は解決できる見込が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度より、粗粒素子の回路応用の基礎となるアーキテクチャ設計学の基礎を整えてきた。研究代表者の発案による「ゆらぎを利用する脳型アーキテクチャ」と「確率共鳴ゲート」を大規模化して回路応用につなげるために、A01-03班の粗粒分子素子の粒度を考慮しながら、系統立てて回路設計ができるよう、全グループにわたる材料・素子の体系化作業を行った。今後、回路設計指針を立てるための重要なデータを得ることができたため、達成度は高いと考える。また、確率共鳴ゲートを用いた非同期式論理回路の設計手法、単一分子素子(粗粒素子)のための要素回路設計についても概ね順調に進んでいると考える。 また、本年度に得られた分子ネットワークにおけるリザバー計算の結果(時系列データを高い精度で学習するために十分な複雑性を持つダイナミクスが生成できること)は、その複なダイナミクスを再現性高く生成できる分子ネットワークを構築できれば、そのダイナミクス(分子ならではの複雑度、集積度、簡便性)を活かした情報処理装置(時系列メモリ)ができることを示している。これまで、センサ周辺の初期機能(要素機能)を粗粒素子のネットワークにより実現する研究を行ってきたが、このリザバー応用(時系列の学習ができる)の結果は、それらを大きく前進させる(高機能化させる)結果であると考える。また、大規模分子ネットワークを抽象化して高速にシミュレーションできる環境も構築できたため、今後の応用展開(別ターゲット分子、または同一ネットワークの別応用)も期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、分子ネットワークをリザバー(非線形・複雑なダイナミクスを自発的に生成する「複雑時空間ダイナミクス」の貯蔵庫)として見なし、その上で学習型のリザバー計算を行う。リザバー計算の適用により、分子の動的な性質を活かした実応用が可能な新規情報処理ができると考えられる。今後は、(1) リザバーの初期値依存性に関する調査、(2) 実際の分子ネットワークを想定した電極配置構造、および制御系の構築を行う、分子リザバー計算の機能実証を行う。 分子パルス生成・伝搬については、新規分子素子を対象とした研究を続けて行なう。A04岸田Gのサイリスタチェーンによるパルス伝搬、大矢Gによる単電子(またはその双対の超伝導)ニューロンから類推される仮想単分子ニューロンチェーンが有力候補として挙げられるが、それらを駆動するためには電源配線が必要である。そのため、A04松本Gは光エネルギーの利用を考えている。学習系(シナプス可塑性)については、メモリスタを用いたSTDPベースの例、軸索成長については物理エミュレータによる論理関数の学習デモを行う予定である。メモリスタシナプスについては、パルス生成・伝搬系とマージした成果を出すことは目指さず、まずはマージする方向性を決めることが重要である。メモリスタを使ってパルス可塑性を出すためには、メモリスタ+容量+スイッチが必要であり、まずはそれを、モノリシックにデバイス化できるか考えてゆく。また、分子メモリスタへの展開も引き続き検討する。
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[Presentation] 浅井 哲也2016
Author(s)
ニューラルネットワーク集積回路の概要 ~歴史と流派、近年の動向と可能性のある未来~
Organizer
超精密加工専門委員会第70回研究会
Place of Presentation
Mielparque Osaka, Osaka, Japan
Year and Date
2016-12-16
Invited
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