2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Glial assembly: a new regulatory machinery of brain function and disorders |
Project/Area Number |
25117013
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 和秀 九州大学, 薬学研究院, 特命教授 (80124379)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 秀俊 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (90444794)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | ミクログリア / 神経障害性疼痛 / 発達障害 / シナプスリモデリング / in vivoイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
IRF8ノックアウトマウス、タモキシフェン投与で誘導されるIRF8コンディショナルノックアウトマウスを用い、ミクログリアの正常な発生~発達過程を阻害することで、動物の社会性行動試験に影響が現れることを明らかにした。その中で、シナプスリモデリングに重要とされるミクログリアの形態変化、突起運動などを観察可能な遺伝子改変マウス(CX3CR1-GFP)と、神経細胞の樹状突起上のスパイン構造を観察可能な遺伝子改変マウス(Thy1-YFPH)の両表現型を持つ遺伝子改変マウス、さらにミクログリアの成熟、活性化応答、運動機能の発現に関与するIRF8遺伝子のノックアウトマウスを交配し、体性感覚野の同一個体の同一のミクログリアにつき4日間の細胞体局在について2光子励起顕微鏡を用いて継続的に観察したところ、野生型マウスでは脳内の定位置にとどまって、細胞突起を動かしているミクログリアが、IRF8を欠損することで細胞体ごと脳内を移動していることを見出した。IRF8欠損マウスのミクログリアは突起構造と分枝構造の減少が顕著であり、時期特異的・ミクログリア特異的なIRF8コンディショナルノックアウトマウス(floxed-IRF8, CX3CR1-creER)を用いた解析からは、同様の突起形成異常と形態変化が、出生後5週目以降の成熟したミクログリアでのIRF8ノックダウン誘導によっても再現することを見出した。IRF8ノックアウトマウスの社会性に関し、3チャンバーテストを用いて評価したところ、社会的認知能力を示すパラメーターに有意な差は見いだせなかったが、社会的新奇記憶力の低下を示す結果を得た。これらの結果は、ミクログリアの発達成熟異常が脳の回路形成に影響を及ぼし、高次機能の発現に混乱を及ぼしていることを示唆しており、ミクログリアの正常な活動が脳の回路形成や高次機能の維持に寄与することを示す1つの証拠になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミクログリア特異的に遺伝子改変を行う新たなツールとしてCX3CR1-creERマウスとミクログリアの機能に関連する遺伝子(IRF8、Mafb)のFloxedマウスを用いた実験を開始しており、Mafbに関連した実験では予想通り、神経障害性疼痛の抑制が観察され、神経傷害後の脊髄後角ミクログリアに発現誘導されることや、siRNAの投与によっても疼痛形成の減弱が見られることを明らかにした。タモキシフェン投与によるコンディショナルIRF8ノックアウトマウスにおいても、過去の結果と一致して、神経障害性疼痛が抑制されている。ミクログリアの分化に関わるとされてきたIRF8を、5,6週齢以降のミクログリアが分化成熟した動物でノックアウトすることによっても形態変化が引き起こされることが明らかになり、ミクログリアの正常時の機能維持にもIRF8が関与するという知見と、社会性行動試験において新奇別個体の認識、もしくは嗜好性が低下していることを見出している。 作成したIRF8コンディショナルノックアウトマウスは、タモキシフェンの投与により時期特異的なミクログリアの細胞形態異常を誘導することが可能であることから、神経回路発達の時期にIRF8ノックダウン(生後1日目)する実験系も検討しており、大脳皮質へのミクログリアの分布遅延や、梨状皮質・扁桃体周囲アストロサイトマーカーの発現増加を捉えており、詳細な検討を継続している。また、神経細胞の微細構造へのミクログリアの影響については、すでに作成したグリア・神経可視化動物を用いて解析を始めており、ミクログリアの異常を起点としたグリアアセンブリの解析が継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
IRF8ノックアウトマウスで観察された社会性行動試験での異常行動に、ミクログリアの発達異常がどのように関わるのかについて下記の検討を行う。 二光子励起顕微鏡を用いた、発達不全ミクログリア(IRF8ノックアウト)の生体内イメージングからミクログリアの異常な形態と細胞動態についての知見を得たことから、シナプスレベルのより詳細な構造を長期的に観察し、スパイン構造やその形成速度の変化について検討する(岡部班との共同研究)。すでに確立した時期特異的なIRF8ノックアウトマウスを用いた実験系では、出生後に拡大するミクログリアの脳内分布に変化がみられているため、より詳細な時系列でミクログリア分布の変化を観察すると共に、神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトの分布・発達状態を固定組織サンプルに対する免疫染色法を用いて解析する。また、EGFP融合IRF8遺伝子をもつ遺伝子改変マウスを導入し、胎児期から発達期にかけてのIRF8発現量や細胞内局在についての観察を行う。 ミクログリアの発達異常マウス(IRF8ノックアウトマウス)で見られた社会的認知機能の低下を示す測定結果について、より一般的な認知・記憶機能の変化という命題に対応させるために、新奇物体認識試験、バーンズ迷路試験等を用いて認知・記憶機能の解析を行う。 前頭前皮質ミクログリアの活性化を誘導するとされる社会的敗北ストレスの、神経障害性疼痛モデル動物に対する影響について検討したところ、病態モデル動物の痛み行動には有意な変化を見出さなかったが、35日目以降に見られる回復期に、一過性の再ストレス負荷を行うことで痛み閾値の再低下が観察され、この現象と慢性ストレスへの感受性との間に相関を見出している。情動系脳領域の変化と痛み受容の変化に相関したミクログリアの機能変化について、ミクログリアのストレス応答性について、組織から単離したミクログリアの遺伝子発現変化を解析する。
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[Journal Article] Cardiac myofibroblast engulfment of dead cells facilitates recovery after myocardial infarction.2017
Author(s)
Nakaya M, Watari K, Tajima M, Nakaya T, Matsuda S, Ohara H, Nishihara H, Yamaguchi H, Hashimoto A, Nishida M, Nagasaka A, Horii Y, Ono H, Iribe G, Inoue R, Tsuda M, Inoue K, Tanaka A, Kuroda M, Nagata S, Kurose H.
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Journal Title
J Clin Invest
Volume: 127(1)
Pages: 383-401
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] A novel P2X4 receptor-selective antagonist produces anti-allodynic effect in a mouse model of herpetic pain.2016
Author(s)
Matsumura Y, Yamashita T, Sasaki A, Nakata E, Kohno K, Masuda T, Tozaki-Saitoh H, Imai T, Kuraishi Y, Tsuda M, Inoue K
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 6
Pages: 32461
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Dorsal horn neurons release extracellular ATP in a VNUT-dependent manner that underlies neuropathic pain.2016
Author(s)
Masuda T, Ozono Y, Mikuriya S, Kohro Y, Tozaki-Saitoh H, Iwatsuki K, Uneyama H, Ichikawa R, Salter MW, Tsuda M, Inoue K
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Journal Title
Nat Commun.
Volume: 7
Pages: 12529
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Purinergic P2Y6 receptors heterodimerize with angiotensin AT1 receptors to promote angiotensin II-induced hypertension.2016
Author(s)
Nishimura A, Sunggip C, Tozaki-Saitoh H, Shimauchi T, Numaga-Tomita T, Hirano K, Ide T, Boeynaems JM, Kurose H, Tsuda M, Robaye B, Inoue K, Nishida M
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Journal Title
Sci Signal
Volume: 9(411)
Pages: ra7
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Glucocorticoid regulation of ATP release from spinal astrocytes underlies diurnal exacerbation of neuropathic mechanical allodynia.2016
Author(s)
S. Koyanagi, N. Kusunose, M. Taniguchi, T. Akamine, Y. Kanado, Y. Ozono, T. Masuda, Y. Kohro, N. Matsunaga, M. Tsuda, M. Salter, K. Inoue, and S. Ohdo.
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Journal Title
Nat. Commun.
Volume: 7
Pages: 13102
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Inhibition of G0/G1 Switch 2 Ameliorates Renal Inflammation in Chronic Kidney Disease.2016
Author(s)
Matsunaga N, Ikeda E, Kakimoto K, Watanabe M, Shindo N, Tsuruta A, Ikeyama H, Hamamura K, Higashi K, Yamashita T, Kondo H, Yoshida Y, Matsuda M, Ogino T, Tokushige K, Itcho K, Furuichi Y, Nakao T, Yasuda K, Doi A, Amamoto T, Aramaki H, Tsuda M, Inoue K, Ojida A, Koyanagi S, Ohdo S
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Journal Title
EBioMedicine
Volume: 13
Pages: 262-273
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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