Research Abstract |
油壷において長期連続観測によってこれまでに得られた比抵抗および関連する諸観測データ(地殻変動,気圧,気温,地中温度,水位,潮位など)をコンパイルした.こうして整理された多変量データの解析を,周波数解析やウエーブレット解析等の手法を適用して昨年度に引き続き行った.また,地中比抵抗構造とその温度,気圧,地下水面変動および含水岩石の飽和度などの効果を考慮した数値計算を開発し,実用化した. 地震に伴う比抵抗変化の極性は,年周変化をすることが知られているが,昨年度の解析により,その極性が地温の鉛直分布の2階微分の符号に非常によく一致することが明らかになった.今年度は,その発生の物理機構を考察し,地震波の通過の際に固体と流体の複合する系(媒質)の熱拡散率に微小擾乱が生じるという物理モデルを提案し,定量的に検証した. 電極間隔を0.5m,1m,3.5mなどに変えた測定のデータや,観測壕の天井に電極を設置した測定のデータを詳しく解析した.異なる電極観測での測定からは,潮汐周期の比抵抗変化の振幅が,電極間隔が小さいほど,極端に小さくなる事がわかった.このことは,比抵抗変化の原因が地下数mの深さにあることを意味する.一方,天井における測定データには,潮汐周期の変動が非常に小さく,特に太陰潮汐(月の引力による潮汐)の成分は測定誤差の範囲で存在しない事がわかった.このことを,開発した数値計算を実行して,潮汐周期変動や年周変動の原因を,それぞれ定量的に明らかにすることができた. 以上の結果,潮汐周期の比抵抗変化が地殻の力学的歪みによって生じているのではないことが結論された. 以上の研究成果は,3編の論文として国際雑誌Tectonophysicsに投稿し,印刷中である.
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