2002 Fiscal Year Annual Research Report
林床面境界層を考慮した森林地における水循環素過程の定量的評価に関する研究
Project/Area Number |
00J00689
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 嘉展 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 樹冠遮断 / リター遮断 / タンクモデル / スギ / マテバシイ / 樹冠形態 / 樹冠通過雨 / 樹幹流 |
Research Abstract |
本年度は,樹冠形態が特徴的に異なる2つの人工林分(スギおよびマテバシイ)における雨水配分の実態を,昨年度までに行った実測データの解析結果から把握し,その結果を反映したモデルの構築を試みた.各林分における林床への雨水到達量(樹冠通過雨量および樹幹流下量)は,樹冠構造(形態および被覆特性)によって,その配分比が大きく異なり,樹冠が厚く枝葉が水平に分岐するスギ林の場合は,林外雨の70%以上が樹冠通過雨となり,樹幹流下量は10%以下になるのに対し,樹冠が薄く枝葉が鉛直に近い角度で分岐するマテバシイ林の場合は,林外雨として供給された雨水の約50%が樹幹流となり,樹冠通過雨量は約35%になることが明らかになった.また,林床に堆積するリター層による雨水遮断量は,リターの堆積量に比例し,各林内に発生する樹冠通過雨量のデータから良好に再現できることがわかり,同一降雨条件下では針葉樹のリターより広葉樹のリターの方がより多くの雨水を遮断する能力があることがわかった.その一方で,リター層からの蒸発速度は,主にリター層内の含水率に規定され,同一含水率条件では針葉樹のリターの方が広葉樹のリターよりも高い蒸発速度を示すことが明らかになった.これらの知見を踏まえて,2段のタンクモデルを構築し,各林内における降雨発生の頻度およびリター層の遮断・蒸発特性を反映した雨水の遮断損失量を推定した結果,林外雨量に対する樹冠遮断率は,スギ林が約20%,マテバシイ林では約15%となり,リター遮断率は,樹冠通過雨量に対する割合で見ると,スギ林で約10%,マテバシイ林では20%にも達し,リター遮断による雨水損失量が森林地における水循環過程の中で重要な水収支項となることが明らかとなった.また,本研究で構築したモデルは林野火災を予測・防止する際に必要となる林床乾燥度の指標としても有用な情報を提供可能であることが示唆された.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 佐藤嘉展, 大槻恭一, 小川 滋: "リター層による降雨遮断量の推定"第6回 水資源に関するシンポジウム 論文集. 609-614 (2002)
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[Publications] Sato, Y., Otsuki, K., Ogawa, S.: "Experimental analysis of litter interception of Cryptomeria japonica and Lithocarpus edulis"INTERPRAEVENT 2002. 2. 973-980 (2002)
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[Publications] 佐藤嘉展, 大槻恭一, 小川 滋: "スギ林およびマテバシイ林におけるリター遮断量の推定"九州大学農学部附属演習林報告. 84. 1-20 (2003)