2002 Fiscal Year Annual Research Report
ベクターの生態特性が病原体動態と進化に与える影響の理論的研究
Project/Area Number |
00J00763
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
川口 勇生 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | zooprophylaxis / insecticide resistance / epidemiological parameter / phylogenetic tree |
Research Abstract |
本年度は昨年度に引き続き家畜を用いたマラリア防除について研究を行った。 マラリア防除戦略のほとんどは殺虫剤を用いて媒介蚊をコントロールするようにデザインされてきた。しかし、殺虫剤抵抗性蚊の出現により防除戦略は失敗に終わっている。本研究では,媒介蚊をマラリアに感染しない家畜に集中させることによって、マラリア感染蚊の人への吸血頻度を減少させ、殺虫剤抵抗性蚊の進化を許さずにマラリアを防除できることを理論的に示した。さらにこのような防除方法は、家畜を1箇所に集め、居住区から隔離することでさらに有効であることがわかった。 また並行して疫学パラメーターが病原体系統樹に与える影響について研究を行った。現在得られる病原体系統樹は病原体の疫学パラメーターなどの疫学動態を反映しているが、疫学パラメーターと病原体系統樹の関係について調べた研究はない。本研究では、多重感染および交差免疫を考慮した多抗原SIR個体ベースモデルを構築し、徹底的なシミュレーションにより、疫学パラメーターと病原体系統樹の関係について解析を行った。結果は疫学パラメーターの中で、病気による死亡率の変化がもっとも系統樹の形に影響を与えるということがわかった。これはインフルエンザのような一本の枝から抗原型が毎年供給されるような系統樹は、ワクチン等の摂取による回復率の上昇によるものではなく、系統間の干渉作用による重感染個体の減少が重要であるということを示す。 年度の後半よりこれらの研究成果をまとめて、学術雑誌に投稿中である。
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