2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
00J00833
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Research Institution | The High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
粕谷 真由美 (青木 真由美) 高エネルギー加速器研究機構, 特別研究員(PD)
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Keywords | ニュートリノ / 振動実験 |
Research Abstract |
ニュートリノは、標準模型では質量を持たない粒子であるが、近年の実験により質量を持っていることが強く支持されており、これは標準模型を超えた物理を探求する大きな理由の一つとなっている。ニュートリノの質量や混合角についての情報は、そのような物理を議論するうえで大変重要であり、それらの精密測定を目的とする多くの実験が検討されている。しかしながら、ニュートリノの質量の階層性やCP位相についての情報を得ることは難しく、そこで、我々は、次世代のニュートリノ振動実験を考えて、それらについてどの程度のことが測定可能であるかを議論した。 ニュートリノビームの源としては、現在、高エネルギー加速器研究機構と日本原子核研究所との共同プロジェクトとして建設が進められている大強度陽子加速器(J-PARC)を仮定した。J-PARCとスーパーカミオカンデ検出器を使った、基線の長さ295kmの振動実験は、ニュートリノの質量二乗差や混合角を精密に測定することを目的としているが、我々は、この実験を引き継ぐものとして、基線の長さが2100kmで、100k tonの水チェレンコフ検出器を用いた場合の振動実験について研究を行った。質量の階層性には二つの候補が考えられるが、このような基線長の長い実験では、物質の効果により、両者の期待される事象の数に違いが生じてくる。我々は、ミューニュートリノが電子ニュートリノに振動する事象の数を測定することで、二つの階層性を区別できる可能性があることを示した。 一方、CP位相は、ニュートリノと反ニュートリノビームを効率良く利用することで、その大きさが制限されると考えられる。これらの両ビームと、スーパーカミオカンデ検出器のおよそ20倍の質量を持つ次世代水チェレンコフ検出器を仮定した場合の、基線長295kmのニュートリノ振動実験についても解析した。その結果、やはりミューオンニュートリノが電子ニュートリノに振動した事象を精密に測定することによって、CP位相の大きさに制限を与えられる可能性があることを示した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] M.Aoki, K.Hagiwara, N.Okamura: "Measuring the CP-violating phase by a long base-line neutrino experiment with Hyper-Kamiokande"Physics Letter. B554. 121-132 (2003)
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[Publications] M.Aoki et al.: "Prospects of very long baseline neutrino oscillation experiments with the KEK-JAERI high intensity proton accelerator"Physical Review. D. (2003)
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[Publications] M.Aoki: "Nucl. Phys. Proc. Suppl. 111"Elsevier Science. 6 (2002)