2002 Fiscal Year Annual Research Report
大腸菌の機能ルールに学ぶ新しい複雑システム制御理論の構築に関する研究
Project/Area Number |
00J01221
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
諸星 知広 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 機能ルール / 定量的シミュレーション / 定性的シミュレーション / リン酸代謝 / ポリリン酸 / リン酸輸送 |
Research Abstract |
大腸菌におけるリンの同化と代謝を例にパラメータの問題を含まない定性的なシミュレーションと、パラメータの問題を含む定量的なシミュレーションの比較を行った。定性的シミュレーションは、当研究室で開発しているVESTを用いて行った。VESTを用いれば、細胞内代謝の因果関係を整理し、機能ルールの妥当性や完成度をチェックすることも可能となった。定量的なシミュレーションは、アナログデジタル混載回路の設計手法を用いて行った。リン酸制限下のケモスタット連続培養実験により菌体外/菌体内リン酸濃度変化の測定を行い、リン酸取り込み速度パラメータとリン酸消費速度パラメータを決定した。このパラメータを用いてシミュレーションを行ったところ、全体として実験結果とシミュレーションの結果は良く合っており、このレベルでのモデルが正当であることが示された。 また、細胞内リン酸濃度とポリリン酸蓄積に関するアルゴリズムについては、遺伝子レベルの実験により解明を行った。大腸菌変異株ライブラリーの中から、ポリリン酸を大量に蓄積する変異株を取得し、その染色体上の変異点を決定したところ、リン酸レギュロンを負に制御するphoU遺伝子の点変異であることがわかった。この変異株は構成的に発現したリン酸特異的輸送系(PST)によるリン酸の過剰な取り込みが起こり、ポリリン酸として蓄積していることがわかった。また、大腸菌の新規リン酸トランスポーターの探索を行ったところ、xasA遺伝子がリン酸トランスポーターとして機能している可能性が示唆された。xasA遺伝子の発現を誘導すると、リン酸の取り込み速度が向上し、アミノ酸飢餓によるポリリン酸蓄積量も向上することが明らかとなった。
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Research Products
(1 results)