2002 Fiscal Year Annual Research Report
近代朝鮮における経済構造の変動と東アジアの商品流通構造
Project/Area Number |
00J01961
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石川 亮太 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 朝鮮 / 華僑 / アジア域内市場 / ネットワーク |
Research Abstract |
・本年は、19世紀末に朝鮮開港場で活動した華僑商人を主たる分析対象として、研究を行った。中心となる資料は、1880年代から1920年代にかけてソウル・仁川で活動した「同順泰」の経営資料である。これらの資料は、昨年度(2001年度)のソウル調査で既に入手していたものである。 ・これら経営資料のうち、本年特に利用したのは、1894年の日清戦争前後の資料である。従来の研究においても、この時期は、朝鮮華僑の最盛期として注目されてきたが、利用資料が日本領事報告等の二次的な資料にとどまっていたために、華僑の経営内容にまで踏み込んだ分析は行われてこなかった。その意味で、本経営資料の分析は、研究史上きわめて重要な作業であると言うことができる。 ・分析の結果あきらかになった朝鮮華僑の活動形態のうち、従来の研究動向との関連で特に重要だと考えられるのは以下の諸点である。 (1)朝鮮華僑の海外取引先が、上海・香港など中国語港だけでなく、神戸・長崎など日本諸港にも広がっていたことが判明した。 (2)取引規模としては上海との取引高が圧倒的で、これは従来の研究結果と合致する。 (3)にもかかわらず、金融や情報等のインフラストラクチャの部門では、日本の取引先に依存する度合いが高かった。朝鮮華僑の通商網は、日本を含む全体が一つの有機体として機能していたのであり、従来かんがえられてきたような上海との2地点間で完結するものではなかったことが判明した。
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