2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
00J01996
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高田 祥司 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 方言 / 文法 / 体系変化 / アスペクト / テンス / ムード / 時間的限定性 / 存在動詞 |
Research Abstract |
これまで、西日本諸方言に比べて研究が少ないという理由から、主に、東北諸方言について、アスペクト・テンス・ムードを中心に記述的研究を行ってきた。本年度は、最終年度ということで、記述した諸方言の体系の比較対照により、理論的に体系変化の方向性を考えた。一般に、<継続>を表すアスペクト形式は有情物の存在を表す動詞が文法化したものだが、昨年度まで、主に調査してきた青森県津軽方言等では、<過去>を明示する場合、アスペクト形式は「書イデアッタ」、存在動詞(有情)は「イデアッタ」で、両者が対応しない。一方、本年度、調査した岩手県遠野方言等では、アスペクト形式が「書イデイデアッタ」に当たる形である。東北諸方言の体系は、この二タイプに大別され、存在動詞の史的変遷に伴い、前者から後者へ変化したと考えられる。もともと、存在動詞は、主語の有情・非情に関わらず「ある」だったが、「ゐる」(□「立つ」)の「〜タリ」の形や、後には「イタ」が、<結果>として存在を表すようになった。標準語では、この「イタ」がいち早く「イル」と交替したが、東北諸方言では、これが残り続け、<一時的存在>(時間的限定性あり)の場合、<過去>を明示するには、依然、「アッタ」を用いる必要があった。津軽方言では、アスペクト形式は、この段階に対応した「書イデアッタ」が用いられるが、存在動詞は、「イデアッタ」が成立して「いる」に統一され、先に安定している。遠野方言では、それを追う形で、「イデアッタ」に対応する「書イデイデアッタ」に当たる形が成立し、アスペクト形式も「いる」系に揃えられて安定したが、その結果、「書イデアッタ」(>「書イダッタ」)は<継続性>を失い、<完成性>を表すようになった。このような出自により、「書イダッタ」は、もともと<現在パーフェクト>を表した「書イダ」とは異なり、その意味を表さない。以上について、『日本語文法』、言語学会大会での発表を考えている。
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Research Products
(1 results)