2002 Fiscal Year Annual Research Report
基底核と視床・新皮質の関係性を考慮したモデルの構築とそのダイナミクスの解析
Project/Area Number |
00J02226
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
北野 勝則 玉川大学, 工学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 大脳基底核 / 線条体 / シミュレーション |
Research Abstract |
細胞内記録実験により、大脳基底核・線条体の主要な細胞である線条体投射細胞が閾値下膜電位で二状態遷移を繰り返すことが示されている。しかし、この実験が行われた麻酔下と覚醒下では細胞の入力源である大脳皮質の活動レベルが根本的に異なるため、観測されている状態遷移が覚醒下でも起こり情報処理に本質的かどうかは自明ではない。これを調べるには覚醒下における閾値下膜電位状態を知る必要があるが、現時点での実験技術では非常に困難である。そこでその間接的な手法として、投射細胞モデルによる計算機実験と覚醒下でも可能である細胞外記録実験との相補的な解析を用いた。もし閾値下で二状態が存在するなら、神経細胞が活動電位を発射するに十分な刺激を与えた場合、刺激に誘発される活動電位が二つの潜時を示すと予想される。まず線条体投射細胞の詳細なモデルを構築し、計算機実験によりこれを確かめた。次に覚醒状態のサルに対して大脳皮質・一次運動野を電気刺激し、線条体での影響を計測した。線条体での計測は細胞外記録法であり投射細胞の活動電位しか計測できないが、前述の仮説の下、刺激に誘発される活動電位の時間分布を調べたところ二峰性の分布を示した。このことから、線条体投射細胞は覚醒下においても閾値下二状態遷移を繰り返し、この遷移が線条体情報処理のなんらかの役割を担っていることを示唆している。また本研究で適用した手法は入出力関係が解剖学的に確定されている部位で応用可能であり、閾値下状態の神経情報処理への寄与を調べる上で重要な手法といえる。
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[Publications] K.Kitano et al.: "Two-state membrane potential transitions of striatal spiny neurons as evidenced by numerical simulations and electrophysiological recordings in awake monkeys"Journal of Neuroscience. 22. 1-6 (2002)
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[Publications] K.Kitano, H.Cateau, T.Fukai: "Self-organization of memory activity through spike-timing-dependent plasticity"Neuroreport. 13. 795-798 (2002)