Research Abstract |
平成14年4月より,昨年度に終了したチベット語訳及び漢訳『阿〓仏国経』全6章の和訳の見直しを開始し,9月末に終了した。その際に,各章を内容に応じてさらに細分し,表題をつけ,それらに番号を付した。第1章は全149節,第2章は全81節,第3章は全38節,第4章は全118節,第5章は全69節,第6章は全160節である。これらの各節を番号順に並べ,表題を列挙した梗概一覧表を作成した。 同年7月には,第4章「阿〓仏国土の菩薩の特徴」の内容分析を,韓国・東国大学校(ソウル市)にて開催された第53回日本印度学仏教学会学術大会で発表した。同年8月に同発表内容をもとに作成した論文を投稿し,同稿は同年12月発行の『印度学仏教学会』第51号に掲載された。内容は,この世と阿〓仏国土の声聞・菩薩の特徴を分析したものである。この世では,声聞が阿羅漢になるまでに4段階,菩薩が正覚者(ブッダ)になるまでには4から10段階の過程を経る必要があるが,この世よりもはるかに優れた世界,阿〓仏国土では途中の段階がなく,一足飛びに阿羅漢やブッダになることができる。すなわち,阿〓仏国土では段階的な向上よりも,一足飛びに向上することの方に価値を置いていることがわかる。 同年10月からは,チベット語訳テキストのうち,ナルタン版,チョネ版,ラサ版の再校訂を開始し,平成15年2月に終了した。他の研究者の便に備えて,これら3本と,昨年度までに完了しているデルゲ版,北京版,ジャンサタム・リタン版,ロンドン写本,東京写本,トクパレス写本,プダク写本の7本,及び漢訳支婁迦識訳と菩提流志訳2本を合わせた合計12本の所在対照一覧表を作成した。一覧表は公開可能な状態である。
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