2002 Fiscal Year Annual Research Report
麻薬依存形成におけるグリア細胞の役割に関する分子薬理学的研究
Project/Area Number |
00J03629
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小澤 徹 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | モルヒネ / 精神依存 / 身体依存 / 禁断症状 / グルタミン酸 / グルタミン酸トランスポーター / GLT-1 / アデノウイルスベクター |
Research Abstract |
モルヒネなどの麻薬性鎮痛薬による依存形成・禁断症状の発現には、脳内のグルタミン酸が重要な役割を果たしていることが示唆されている。本研究ではこれまでに、モルヒネ依存ラットおよびモルヒネ禁断症状誘発後のラットの一部の脳部位においてグリア型グルタミン酸トランスポーターの一つであるGLT-1の遺伝子発現量が変化することなどを報告しており、麻薬依存時のグルタミン酸神経系の可塑的変化のメカニズムの一部に、GLT-1発現量の変化によるグルタミン酸取り込み機能の変化が関与する可能性を指摘してきた。本年度は、アデノウイルスベクターを用いてGLT-1遺伝子をラット脳内に部位特異的に導入し、モルヒネ依存に対する影響を検討した。まず、GLT-1とEGFPを同時に発現させる組換えアデノウイルスを作製し、培養細胞におけるGLT-1タンパクの機能的発現、また、ラット脳内への微量注入により注入部位周辺におけるGLT-1タンパクの高発現を確認した。次に本組換えアデノウイルスを用いて、モルヒネ身体依存との関連が指摘されている青斑核、あるいは精神依存との関連が指摘されている側坐核shellにGLT-1遺伝子を導入し、それらに対する影響を検討した。その結果、両側青斑核内にGLT-1とEGFPを同時に発現させた群においては、EGFPのみを発現させたコントロール群と比較して、身体的禁断症状が全体として軽減しており、いくつかの症状に関しては有意に減弱していた。また両側側坐核shellにGLT-1とEGFPを同時に発現させた群においては、EGFPのみを発現させたコントロール群と比較して、モルヒネにより誘発される条件付け場所嗜好反応は有意に減弱していた。これらの結果から、青斑核内のGLT-1はモルヒネによる身体依存を、側坐核shell内のGLT-1はモルヒネによる精神依存を、それぞれ抑制的に調節していることが示唆される。
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