Research Abstract |
陽陰ハイブリッド解法を非定常・非平衡流の典型的な流れである,高エンタルピー衝撃風洞内の流れの解析に適用した.前年度行った,名古屋大学の衝撃風洞を模擬した解析で,高エンタルピー流れを仮定した場合の解析結果を論文としてまとめた.また,実際に運用されている高エンタルピー衝撃風洞の流れ場を解析した.計算モデルとして,カリフォルニア工科大学のT5を用いた.この解析からも,昨年度判明したノズル溶融の原因として考えられる,流れの剥離が生じた.つまり,高温気体の流入によるノズル溶融は,流れの剥離による熱伝導および壁への熱伝達の阻害によるものと結論付けられた.これは,本研究により初めて明らかにされた.つぎに,本解法の非定常・粘性流解析への有効性をより定量的に示すために,衝撃波管内の粘性干渉を伴った衝撃波伝播問題を解き,従来用いられてきた計算法との比較を行った.一般に,粘性流を解析する場合には,粘性層(例えば境界層)付近に極めて小さい計算セルを分布させる必要がある.このような場合には,どのような時間刻み幅を設定しても,本解法が従来法と比較して,CPU時間を削減できることを示した.また,その場合にも計算精度は陽解法と同等である.陽解法の場合にはCFL条件の制約上,時間刻み幅を大きく出来ない.陽解法の場合は,粘性層中の計算セルが小さくなればなるほど,時間刻み幅が小さくなるので,非定常計算を解く場合には膨大な計算時間が必要になることから,精度を同等に保ちつつ,計算効率を上げることの出来る本解法の有効性は非常に高い.このテストケースの場合には,本解法の計算時間は,陽解法の約3.3%である.また,陰解法では,非定常問題の場合,打ち切り誤差が大きくなり,計算効率は高くても,計算精度が低く,実用上は問題がある.さらに,本解法と解適合法を組み合わせ,より複雑な流れ場解析に適用した.非定常・粘性問題の場合は,解適合処理を効率的に行う必要があるが,ここで減衰関数を用いた計算セルサイズ制御法を提案した.さらに計算のロバスト性を上げるために,これらの方法と幾何学的セル適合法も提案し,計算効率と精度維持を両立させた.この手法を衝撃波の非定常反射問題に適用し,粘性干渉における未解決問題の一つである,分枝衝撃波の構造を解明することに成功した.
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