2002 Fiscal Year Annual Research Report
動物進化におけるゲノムの多重重複による生物多様化過程に関するメダカを用いた解析
Project/Area Number |
00J04279
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Research Institution | Nagoya University |
Research Fellow |
黒澤 仁 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Hox / 遺伝子クラスター / 転写因子 / メダカ / shotgun sequencing |
Research Abstract |
ゲノムの重複による遺伝子数の増大は生物の進化の主要な原因と考えられており、とりわけHox遺伝子クラスターの重複化はその典型として注目されている。Hox遺伝子は多細胞動物の発生分化過程で体の各部位の運命を決定づける役割を担う転写因子で13グループに分類され、この13個が1つのクラスターを形成している。ヒトやマウスでは39個の遺伝子が4クラスターに分配されており、魚類では、1996年フグで4個のクラスター、31種のHox遺伝子が同定された。しかし1997年になってゼブラフィッシュでは7個のクラスターに47種のHox遺伝子が存在することが示された。これら魚類の相違の理由は両者の進化的中間に位置するメダカの解析により明らかにされる可能性がある。そこで申請者はメダカゲノム上に何個のHox遺伝子が何クラスターとして存在するかを解析した。 PCR法を用いてメダカゲノムDNAに存在する多数のHox遺伝子を単離し、それをプローブにして、メダカBACライブラリーからHox遺伝子を含むBACクローンを単離した。さらにこのクローンに含まれるHox遺伝子全領域1500kbのshotgun sequencingを行った。その結果、メダカには全部で46Hox遺伝子が確認され7つのクラスターであることが確認された。またフグでも新しいクラスターが発見され、これらの魚類はすべて7クラスターであることが判明した。 次にこれらのHoxタンパク質の全アミノ酸配列を用いて全13グループの分子系統樹を作製した。その結果、ヒトのクラスター内の遺伝子及びそれに対応する倍化した魚類の2つのサブクラスターa群及びb群遺伝子の類縁関係については大きく分けて2つのパターンが存在した。第1は、倍数化する前にそのHox遺伝子が果たしていた役割をaクラスターの遺伝子がそのまま受け継ぎ、一方でb群上のHox遺伝子は、大きく配列を変化させて新しい機能を獲得した。このパターンを示すグループが少なくとも3種類あった。第二は、倍化してできたa群、b群遺伝子が、それぞれ倍化する前の性質を保持しながら相互補完的役割を果たし進化したと考えられる例で、これは2グループあった。さらにフグやゼブラフィッシュでは存在しなかったり、大きく異なるHoxC3aやA7aが新たに同定した。
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