2002 Fiscal Year Annual Research Report
M-CSF,RANKLによる破骨細胞の分化誘導と機能発現に関する研究
Project/Area Number |
00J04597
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
新井 文用 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 造血幹細胞 / SP細胞 / 微小環境(ニッチ) / Tie2 / アンジオポエチン-1 / 5-FU |
Research Abstract |
本年度は,造血幹細胞からの破骨細胞分化とその調節機構,間葉系幹細胞の単離と骨芽細胞の分化に関する研究から得られた知見をもとに,さらに骨髄内で幹細胞がどのように維持・増殖していくのか,幹細胞と微小環境(ニッチ)の関わりという観点で研究を展開した。その結果, 1.造血幹細胞(lineage markers陰性c-Kit陽性Sca-1陽性:KSL)細胞は,細胞周期の観点から「静止幹細胞」と「動的幹細胞」に区別することができ,KSL細胞のなかでもhoechst33342に染まらないSPは静止幹細胞で,SP以外の細胞(MP : main population)は動的で,より前駆細胞的な幹細胞であるということを明らかにした。 2.マウスに5-フルオロウラシル(5-FU)を投与し,2日後に骨髄細胞を解析したところ,KSL細胞の中でもSP細胞はみられるが,MP細胞は消失した。また骨髄内は皮質骨に接するosteoblastic zoneとより内腔のvascular zoneに大別されることが知られており,さらに5-FU投与後初期には骨髄内の細胞はosteoblastic zoneにのみ存在することが報告されていることから,osteoblastic zoneは造血幹細胞のニッチである可能性が示唆される。 上記1,2からKSL細胞の中でもSP細胞はニッチに存在する幹細胞であることが考えられた。 ついで,KSLSP細胞について詳細に検討したところ, 3.KSLの中でもSP細胞でTie2受容体の発現が特異的に高いことがわかった。 4.Tie2のリガンドであるアンジオポイエチン-1(Ang1)存在下で造血幹細胞の未分化性が長期間にわたって維持されることを見いだした。またTie2-Ang1シグナルにより,造血幹細胞のストローマ細胞への接着が亢進した。 以上の1-4の結果から,KSLSP細胞は幹細胞の中でもニッチに存在する静止幹細胞で,Tie2-Ang1シグナルは幹細胞をニッチとどめる役割があることが示唆された。
|
-
[Publications] Arai F: "Mesenchymal stem cells in perichondrium express activated leukocyte cell adhesion molecule and participate in endochondral ossification"The Journal of Experimental Medicine. 195・12. 1549-1563 (2002)
-
[Publications] Oike Y: "Regulation of vasculogenesis and angiogenesis by EphB/ephrin-B2 signaling between endothelial cells and surrounding mesenchymal cells"Blood. 100・4. 1326-1333 (2002)
-
[Publications] Arai F: "Endothelial and hematopoietic cells in the intra-embryonic compartment"Hematopoietic Stem Cell Development. Godin I and Cumano A, editors. (in press).
-
[Publications] 新井 文用: "破骨細胞・骨芽細胞・間葉系幹細胞とサイトカイン サイトカインがわかる (宮島 篤 編集)"羊土社. 7 (2002)
-
[Publications] 新井 文用: "間葉系幹細胞の特性(特集:間葉系幹細胞)分子細胞治療"先端医学社. 7 (2002)
-
[Publications] 新井 文用: "高次生命現象・哺乳類器官形成・造血細胞 分子生物学イラストレイテッド 改訂第2版.(田村隆明, 山本 雅 編集)"羊土社. 4 (2002)
-
[Publications] 新井 文用: "幹細胞 THE BONE(特集:運動器の再生医療II.骨の再生)"メディカルレビュー社. 7 (2002)