2002 Fiscal Year Annual Research Report
バクテリア染色体の分配機構とこれに関わる染色体領域の研究
Project/Area Number |
00J04637
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Research Institution | Kumamoto University |
Research Fellow |
山市 嘉治 熊本大学, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 大腸菌 / 染色体分配 / 染色体分断株 / FISH / セントロメア |
Research Abstract |
大腸菌の細胞周期において、複製した染色体は極めて正確に娘細胞に分配される。この過程で染色体の複製起点(oriC)領域は細胞の中央から両極へと移動する。このことは、oriCの近傍にoriC領域の移動に関わるシス領域があることを示唆している。本研究では、このシス機能部位の同定を行った。 染色体の一部を切り出し、その領域を第2の染色体として細胞内に保持させる、染色体分断株という独創的な変異株を作成する系を確立した。これら変異株について染色体分配に異常が生じているか否かを解析し、本年度までに染色体のoriC領域の細胞中央から両極方向への移動に関わるシス領域が染色体の89.1〜89.5minの約15kbの範囲内に存在するという結果を得た。 本年度はこの15kbの範囲内について多数の染色体欠失株を作成し、それぞれの株についてoriC領域の両極方向への移動が阻害されているか否かを解析した。この結果、大腸菌の染色体分配においてDNA分配にシス位で機能する46bpの配列を同定した。さらに、細胞中央から両極方向へ移動する機能を失った分配の変異プラスミドを用い、この変異をシス位で相補できる配列として、46bpの配列の中からヘアピン構造をとりうる25bpの配列を同定した。これらの結果より、migSと命名したたった25bpの配列が、染色体の細胞中央から両極方向への移動にシス位で機能する配列であることが示された。高コピー数のプラスミド上にクローニングしたmigS配列によってoriC領域の両極方向への移動が阻害されたことから、migS配列を認識して染色体の分配に機能するタンパク質の存在が示唆された。以上の結果より、migS配列は大腸菌においていわゆるセントロメアとして働く配列であると結論した。
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