2002 Fiscal Year Annual Research Report
新規抗腫瘍性抗生物質マデュロペプチンクロモフォアの全合成研究
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00J06294
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加藤 信樹 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | エンジイン / アグリコン / アトロプ異性 |
Research Abstract |
マデュロペプチンは、抗菌、抗腫瘍活性をもつ天然物で、白血病および黒色腫細胞に対して非常に強力な活性を持っていることから有用な制癌剤として期待されている。その活性本体であるクロモフォアの全合成を行う上でクロモフォアの特徴的構造に由来する3つの問題点が挙げられる。まず、高度に歪んだ9員環ジインコア部の構築、次に9負環ジインコア部に結合した15員環アンサマクロラクタムの構築、最後に3級水酸基のグリコシル化である。既に私は、各フラグメントの合成法を確立し、全合成を行う上で問題となるアトロプ選択的な15員環アンサマクロラクタムの構築ならびに9員環ジイン構造の効率的な構築を7'位に水酸基を持たないでオキシモデルで成功している。しかし、9員環ジイン構築の際、4,13位二重結合ならびにアトロプ異性の異性化が起きるという問題点を残していた。今回、私は4,13位二重結合の異性化およびアトロプの異性化の抑止を検討した。 まず、問題となる4,13位二重結合をエポキシドでマスクしたが、野崎-桧山-岸反応による9員環化の際、脱酸素化と共に4,13位二重結合の異性化が起きてしまった。次にクロム-アレン錯体によるアトロプ異性の制御を試みたがクロム-アレン錯体を得ることはできなかった。そこで7'位水酸基を持つ天然体で7'位水酸基に嵩高い保養基をつけることで立体反発により異性化が何らかの影響を受けるのではないかと考えた。また、7'位水酸基と塩素原子の立体反発により望むアトロプ異性体が安定になるのではないかとも考えた。エンジインコア部とフェニルプロピオン酸部のアリールエーテル化はモデルとは異なり20%と低収率であったが、BHTを添加することで収率が60%まで向上することを見出した。その後、数段階で9員環前駆体へと導き、野崎-桧山-岸反応による9員環化条件に付したところ、またも4,13位二重結合ならびにアトロプ異性の異性化が起きてしまった。現在4,13位二重結合ならびにアトロプ異性の異性化を検討中である。
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