2002 Fiscal Year Annual Research Report
サル下側頭葉皮質における視覚的物体認知表現機構についての光計測法による解析
Project/Area Number |
00J07086
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山根 ゆか子 北海道大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 内因性シグナル / 光計測法 / 視覚情報処理 / コラム構造 / 下側頭葉皮質 |
Research Abstract |
下側頭葉皮質は物体認知に関わる中枢経路の最終段階に位置している。今までの研究で、下側頭葉皮質ニューロンは、中程度に複雑な図形特徴に応じること、また、よく似た図形特徴に応じるニューロンが集まってコラムを形成していることが示されている。普段目にしている物体にはさまざまな図形特徴が含まれるので、物体像は、下側頭葉皮質では、いくつかの異なる図形特徴に応じるコラムの活動の組み合わせによって表現されていると予想された。しかし、以前までの電気生理学的方法では、それを直接示すのは困難であった。本研究では、イメージングの手法を用いてこの問題にアプローチした。麻酔下のマカクサルにさまざまな視覚刺激を与えたときの下側頭葉皮質表面の神経活動を光計測法を用いて二次元的に記録し、その応答特性を検討した。具体的には、複雑な物体像を部分に分割し、複雑な物体像そのものやその一部分を取り除いたもの、あるいは部分の空間配置をかえたものを視覚刺激として用いた。光計測法の結果、物体の部分的な特徴に応答するコラムや、物体の全体的な形状に応答するコラムがあることが分かった。細胞外活動記録法により、コラム内のニューロンの応答特性を詳細に検討したところ、前者のタイプのコラムから記録したニューロンは物体の中にその特徴があるといつも応答した。従って、このようなコラムはある特定の図形特徴の存在を示すのに役立っていると考えられる。後者のタイプのコラムから記録したニューロンは、細かい形状や色には選択性が低いが、部分の配置に対する選択性が高かった。このようなコラムは物体像の部分と部分の空間的関係を表現するために必要なコラムであると考えられる。以上により、物体像は部分的な図形特徴を決める神経細胞群とその配置を決める神経細胞群の組み合わせにより表現されていることが示唆された。
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