2002 Fiscal Year Annual Research Report
感情経験と自己-「合理性」対「感情性」という矛盾した構造が自己構成に与える影響
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00J08071
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
崎山 治男 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 感情社会学 / 感情労働 / 文明化論 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は、看護職の「感情労働」に関する実証研究から、感情経験と自己像構成のあり方との関係性をさらに考察し、それを纏め上げたものと、現代社会分析のために感情社会学の新たな展開を目指した理論的考察とに大別出来る。 前者については、従来の感情労働研究における「感情管理」を強制される事に伴う自己像構成の困難というテーゼに関して反駁を試みた。その中では、看護職が患者との関わりの中で、「感情管理」を支える感情規則を読み替えていく技法が明らかにされた。またさらに、こうした考察を通して、既存の「感情管理」の方法の脱慣習化を図っていく方法が明らかにされた。この点については、拙稿「感情規則の相対化のプロセス」、並びに論文「感情経験と自己」に纏められている。 また、後者についてはエリアスの文明化論や、その影響を受けたインフォーマル学派が示す、現代社会における「感情管理化」に関する楽観論と、ホクシールドに代表される「感情管理化」に関する疎外論との対置を通した理論的考察を試みた。その中では、文明化・インフォーマル化がもたらす「感情管理」の進展とその高度化こそが、「感情管理化」の進展に伴う感情経験からの自己疎外をもたらす、という関連性があることから、両者の共犯関係こそが考察されるべきであることが示された。さらに、文明化・インフォーマル化の進展に伴う、文化産業における感情経験の合理化・商品化の進展が、個々人の感情経験を馴致する中で、既存の「感情管理」への同調要因となることが示された。この点についての考察は、拙稿「感情管理化社会の様態」に纏められている。
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Research Products
(2 results)