2002 Fiscal Year Annual Research Report
成長モデルへの数値解析的アプローチ:産業政策史の評価
Project/Area Number |
00J08114
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
下川 哲矢 東京大学, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 最適課税 / デリバティブ / オプション / 割引債 / リスク / 多部門モデル / シミュレーション分析 / 産業補助金政策 |
Research Abstract |
昨年度までの研究では、多資本が存在する場合の課税/補助金ルールを理論的に明らかにし、さらに、この理論モデルを数値計算モデルとして実装、簡単な実証分析を行った。本年度は、これらの結果を受けて、さらに多くの部門が存在するモデルに拡張する予定であった。しかしながら、研究成果報告を作成する過程において、理論的な部分の分析に疑問が投げかけられ、その修正および改良の必要が生じたために、数値的な部分の分析は予定通りに進まなかった。数値解析的な部分の分析としては、小規模な並列コンピュータを作成するに留まった。当初目標としていたように、大規模な数値解析もでるを用いて日本経済の補助金/課税政策を分析することが出来ず残念ではあるが、その一方で、研究の成果を公表できたことは収穫であった。 本年度は多くの研究時間を理論的な部分の改良に費やすこととなったが、研究成果報告を作成する過程において、新たに得られた知見や改良点は以下の通りである。 (1)デリバティブ取引へ最適課税ルールを拡張した。 具体的には、オプション取引や割引債取引にも最適課税ルールの適用範囲を広げるとともに、価格情報のみから政策立案者が課税率を決定できるように課税ルールを改良した。 デリバティブ取引は、今やその想定元本が全世界のGNPを超えるほど、巨大なものになっている。しかしながら、経済学はデリバティブ取引のような複雑なリスク構造をもつ取引への有効な課税ルールを提示できていない。この拡張によって、最適資産収益課税ルールの提要範囲がデリバティブ取引全体に及ぶとともに、政策立案者が資産価格情報のみから課税率を決定することができるようになる。実証的にも当該課税率を取り扱いやすくなり、課税ルールの利用範囲が大幅に高まったといえる。 (2)技術的な側面について、主要定理の別証明を考案した。具体的には、測度変換を用いる比較的オーソドックスな手法によって、資産収益への最適課税ルールを導入した。この別証明を与えることで、当初証明に使用した手法の正当性が確認されるとともに、一般にも受け入れられやすくなったと思われる。
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