2002 Fiscal Year Annual Research Report
多数の微小粘性体から構成される複合系の変形プロセスに対する数値実験的研究
Project/Area Number |
00J08291
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新村 裕昭 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 格子ボルツマン法 / 多成分流体混合系 / 界面張力 / 濡れ / 3次元数値計算 / 相分離 / ずり応力 / 成長速度 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度までに作成された格子ボルツマン方による数値計算法を用いて、流れ場における流体相分離現象の成長速度の測定実験を行った。多成分粘性流体系の相分離の成長速度に対する流体運動の効果を調べることを目的とした。相分離で形成される構造の流さスケールRの時間tに対する成長速度は一般にR∝t^αの形がよく用いられる。よって成長率αを数値実験から見積もり、ずり応力場の影響を論議する。 数値実験は、互いに不混和に調整された5つの流体成分が同じ体積割合でよく混合している状況を初期条件として、上下を2枚の平行平板で挟んだ2次元の系を用い、相分離による構造スケール(各領域の平均長径・平均短径)の時間発展を計測し、それぞれの成長率αを求めた。静止場およびずり応力場に対してこの計算を行った。推定されるレイノルズ数、キャピラリー数はそれぞれ〜0.28,〜0.0077であり、界面張力が効いた規模の小さい流れ場に相当する。 結果として、静止場、ずり応力場ともに各成分がそれぞれ相分離によって成長していく様子が観察された。成長には、互いの成分の拡散による成長と、近距離にいる同じ成分相どうしの流体力学的な合体成長が認められた。拡散成長では、近距離にいる二つの同一成分相のうち小さい方が縮小しながら大きい方が増大することで合一していく粗大化も見られた。流体力学的合体は静止場にはほとんどみられず、ずり応力場において顕著であった。成長率αは、静止場では長軸短軸ともに約0.22、ずり応力場で長軸〜0.4、短軸〜0.3であった。これからずり応力が成長速度を増加させること、相分離の構造を時間とともに引き延ばしていくことが確認された。 この計算における成長率が一般によく知られている拡散律則成長のα=1/2に比べて小さいのは、複数の異なる相の存在によって互いの相が他成分の拡散流速を疎外することに依っている。これは多成分多相系における相分離に特徴的な効果であるといえる。 この研究成果は、11th INTERNATIONAL CONFERENCE ON DISCRETE SIMULATION OF FLUID DYNAMICS AND SOFT CONDENSED MATTER(Shanghai,2002)で発表された。また、現在物理系の学術雑誌への投稿準備中である。
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