2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
00J08563
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 令子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | V(D)J組換え / 抗原受容体 |
Research Abstract |
抗原受容体遺伝子のV(D)J組換えは、高等動物において唯一見られるDNAの体細胞組換えを伴う多重遺伝子系の発現制御機構である。このV(D)J組換えは、高度に保存された7mer(CACAGTG)および9mer(ACAAAAACC)と、それを隔てる12bpあるいは23bpのspacer配列からなる共通の組換えシグナル配列(RSS)を、組換え酵素Recombination Activating Gene-1,2(RAG-1,2)が認識し、DNAの二重鎖切断を導入することによって引き起こされる。V(D)J組換えでは、12bpと23bpのspacer配列を持つRSS間でのみ組換えが許されるという、いわゆる12/23 ruleにより、機能的な抗原受容体の発現およびリンパ細胞の正常な分化が保証されるが、これら組換えの分子機構に関してはいまだ不明な点が多い。本研究ではV(D)J組換えの分子機構を明らかにするために、組換え酵素RAGと組換えシグナル配列との構造解析を試みた。これまでRAGタンパク質の構造解析は、可溶性のタンパク質を得ることが極めて難しく、ほとんど進展が見られなかった。本研究では、昨年in vitroのタンパク質合成系を用いてRAG1タンパク質の可溶化に成功したが、発現量が非常に少なく構造解析に必要な量のタンパク質を得ることが困難であった。そこで、本年度は、in vitroタンパク質合成系にてRAG1タンパク質を合成する過程で新たに同定した、RAG1タンパク質のNonamer binding domain(NBD)に関して、合成ペプチドを化学的に合成し、これをRefoldingすることにより可溶性のNBDタンパク質を得ることに成功した。また、大腸菌の菌株、発現ベクターを検討した結果、大腸菌を用いた発現系により可溶性のNBDタンパク質を得ることにも成功した。これらの系によって得られたNBDタンパク質はゲルシフト解析の結果、DNA結合活性を持つことが確認され、機能的なタンパク質であることが確認された。いずれの系においてもmgオーダーのタンパク質が容易に得られることから、今後はこれらのタンパク質を用いてNBD-9mer複合体の構造解析をX線結晶構造解析、NMRの手法を用いて行う予定である。これにより、V(D)J組換えの最初のステップであるRAG1のNBDによるRSSの9mer認識の分子機構を明らかにする予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Kobayakawa et al.: "Stomatin-related olfactory protein, SRO, specifically expressed in the murine olfactory sensory neurons"Journal of Neuroscience. 22(14). 5931-5937 (2002)
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[Publications] 小早川高, 林令子, 坂野仁: "嗅細胞特異的ストマチン関連タンパク質SROと匂い識別の分子機構"脳の科学. 24. 1011-1019 (2002)