2002 Fiscal Year Annual Research Report
動的認識システムの発達モデルと、適切な学習課題の検討
Project/Area Number |
00J09422
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
森本 元太郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 学習 / ゲーム / リカレントニューラルネットワーク / 認知発達 / カオス的遍歴 |
Research Abstract |
本年度は離散化された記号を交換するダイナミクスから、実変数を交換するダイナミクスに拡張し、その性質を調べた。ゲーム理論の視点から解釈すれば、混合戦略を許すように拡張した戦略の混合拡大である。このようなモデルは実際のゲームの相互作用と戦略の変化のタイムスケールが離れた極限でのモデルとして、進化的ゲーム理論における学習のダイナミクスとして近年理論的研究が進められているテーマである。競合的なゲームで、プレーヤーの内部に関係を再現するシミュレーションによって、カオス的遍歴現象といえるふるまいが見られた。均衡点や周期解は存在するが、実際のダイナミクスはローカルな規則性を生み出したり、壊したりを繰り返す。このとき内部モデルはプレーヤー間で交互に不安定化することがわかった。 相互作用の質の違いとして解釈すれば、閾値が与えられた言語的なモデルから、直接相互作用のモデルへの変化と考えられる。認知発達を感覚と運動を介して環境と結合した系として捉えるべき、という考え方は古くから提唱されているが、本研究では、シミュレーションに乗せてその不安定性の起源と役割を議論することができた。 本研究に利用したリカレントニューラルネットワークは、かなり複雑なダイナミクスでも再現できる。だが、そのダイナミクスはパラメータの変動に非常に鋭敏である。また、単純なモデルで学習可能な対象に対しても複雑なモデルを構成しがちであり、簡単なモデルを選択するというような、一般的に望ましいとされる基準を一切持たないように思われる。学習、記憶といった現象をダイナミカルシステムとして捉えた時、時には安定した簡単なモデルを維持することができるのはどういう場合か、という問いに答えることが今後の課題と言える。
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