2002 Fiscal Year Annual Research Report
アズキゾウムシに寄生する利己的遺伝因子Wolbachiaの感染動態と共進化の解明
Project/Area Number |
00J09615
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今藤 夏子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Wolbachia / アズキゾウムシ / 細胞内共生 / 存在量 / 適応度 / 多重感染 / 遺伝子水平転移 |
Research Abstract |
アズキゾウムシは、異なる3系統の細胞内共生細菌Wolbachia(wBruCon、wBruOri、wBruAus、以下、各々Con、Ori、Ausと略記)に感染していることがこれまで明らかになっている(Kondo et al. 2002 Mol. Ecol.)。これら3系統のうちAusのwspを含むゲノム断片は、宿主X染色体に水平転移した遣伝子断片として存在することが、昨年度の研究により明らかになっており、本年度は、これを世界で初めての原核生物から真核生物へのゲノム遺伝子水平転移の確実な証拠として米国科学アカデミー紀要に発表した。 細胞内に存在するConとOriについて、宿主の遺伝的背景をそろえて各系統の存在量を調べた。Conの存在量は、単一感染系統に比べると、Oriとの二重感染時にはOriの存在量以上に抑えられており、2系統間に相互作用があることがわかった。さらに、適応度に対する影響を調べたところ、ConとOriの二重感染系統では、Conの単一感染および非感染系統に比べ、有意に適応度が低下することがわかった。一方、Conの単一感染と非感染系統間にも適応度に有意差があり、Conの単一感染は宿主の適応度にとって正の効果をもたらす可能性が示唆された。 日本のアズキゾウムシ野外個体群において、ConとOriの二重感染は90%以上と非常に高頻度で見られることに加え(Kondo et al. 2002 Mol. Ecol.)、本年度は東アジアからアフリカにかけての広い地域で採集されたアズキゾウムシにおいても、同様に90%以上が二重感染していることが明らかになった。一方、これまでの研究から、Conは非常に強いCI、Oriは中程度のCIを示すことがわかっており、アズキゾウムシ個体群において、宿主への負の適応度効果を上回る強さのCI効果によって、二重感染が蔓延したと考えられた。
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