2002 Fiscal Year Annual Research Report
時刻可視化システムを用いた概日時計発振の分子機構の解明
Project/Area Number |
00J09722
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
広田 毅 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 概日時計 / Per遺伝子 / GFP / トランスジェニックマウス / 視交叉上核 / rat-1細胞 / グルコース / 位相シフト機構 |
Research Abstract |
交付申請書に記載した研究目的・研究実施計画に沿って研究を行い、下記の成果を得た。 まず、Per1遺伝子の上流配列に短寿命改変型GFPをつないだコンストラクトを導入したトランスジェニックマウスを用いて、視交叉上核におけるGFPの発現を解析した。2系統のマウスについて脳切片を作製し、蛍光顕微鏡を用いて観察したが、視交叉上核に特異的なGFP発現は見られなかった。今後、他の系統についても解析を進める予定である。 これと並行して、末梢時計研究のモデル細胞であるrat-1細胞において、培地交換の操作がPer1/2遺伝子の発現を低下させ、さらに時計遺伝子の発現リズムを誘起する分子機構を解析した。まず、Per発現の低下を引き起こす原因を探索した結果、培地成分の一つであるグルコースを投与することによってPer1/2遺伝子の発現が共に低下し、培地交換の場合と同様のリズムが誘導されることを見出した。さらに、Per発現の低下にはグルコースの代謝およびRNAとタンパク質の生合成が必要であることが判明した。そこで、Per発現の低下に関与する因子を探索するため、DNAマイクロアレイ解析によってグルコース応答遺伝子を網羅的に解析した。発現量が急上昇する遺伝子群の中に、転写調節因子TIEG1・VDUP1・HES1の遺伝子が含まれていたことから、次に、これら遺伝子の発現量の経時変化を詳細に解析した。その結果、Tieg1とVdup1遺伝子はグルコース代謝に応答する前初期遺伝子であることが判明した。以上の解析を通じて、食餌の主要成分の一つであるグルコースが末梢時計の同調因子として働く可能性を示すことができた。さらに、グルコースによる時計同調が新規の経路を介することを示し、この過程に関与する候補因子の同定に成功した。これらの研究成果は、肝臓や心臓などに存在する末梢時計の同調機構を解明する上で重要な意味をもつといえる。
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Research Products
(1 results)