2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
00J09750
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
陣 英克 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 火星 / 太陽風 / 電離層 / 金星 / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
火星、金星のような非磁化惑星の上層大気と太陽風の相互作用を、数値的な手法によって調べている。 両惑星とも太陽風と電離層が直接相互作用するため、太陽風と電離層の間にionopauseという境界が出来る。このことは昔からプラズマ物理の理論によって予測されていたが、実際に人工衛星で観測してみると、金星と火星の電離層内にしばしば太陽風の磁場が侵入することが解った。このことを説明するため、数々の研究者が数値的なモデルを用いるなどして研究を行ってきた。しかし、現在においても磁場の侵入過程、それから電離層内に観測のような磁場構造がどういう仕組みで出来るかについて納得の出来る解釈は無い。私は、例えば光化学反応や、重力、衝突、衝突による磁場の拡散など電離層には多くのパラメーターが存在して、それらがどう太陽風と電離層の相互作用に影響を及ぼしているかよく分からないことが、この問題を未解決のままにしている原因であると考えた。そして、それらのパラメーターが磁場の侵入にどう効くかを調べるために、流体シミュレーションコードを開発した。 完成した流体コードを用いて調べた結果、重力や衝突、磁場の拡散は影響を及ぼすものの、本質的に磁場の侵入過程、磁場の構造にとって重要なのは、光化学反応による電離層プラズマの生成と消滅であることが解った。具体的には、太陽風動圧の影響が、電離層プラズマの流出入バランスに変化を及ぼし、太陽風動圧がある以上になると、電離層プラズマは支えきれず潰れてしまい、それによって太陽風が磁場を伴って流入することが明らかになった。また、光化学反応のみを考慮すると電離層は潜在的に二層構造であることが解り、磁場の流入後はこの二層構造が効いて観測のような磁場構造が作られることが明らかになった。以上のことは、これまでの研究では出てこなかった新しい、そしてもっともらしい解釈である。 この成果は、投稿論文にまとめている。
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