2002 Fiscal Year Annual Research Report
F_1-ATPaseの1分子活性測定系の開発と解析
Project/Area Number |
00J10205
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
原 陽子 (弘埜 陽子) 東京工業大学, 生命理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | F_1-ATPase / 1分子 / 活性 |
Research Abstract |
F_1-ATPaseは、ATP加水分解に伴って、γサブユニット(以下γ)を回転させる世界最小の回転モーターである。本研究ではF_1ATPaseの回転を詳細に1分子観察することによって、以下のことを明らかにした。 1.加水分解中に連続的に回転しているF_1-ATPase(以下F_1)のγは、時々長い間(〜30秒)停止し、また回転し始める。この停止状態は、触媒サブユニットであるβが、ATP加水分解の途中でADPを解離せずに結合したまま不活性化した状態(ADP阻害型)であり、また、F_1はATPが結合してから、γが90°回転したところでADP阻害型になることがわかった。これは1分子が確率的に活性化状態と不活性化状態を行き来していることを初めて捉えたものである。また、F_1は1つのATPを加水分解するのに伴って120°回転し、この回転は、90°と30°の回転に分けて行われる。そのうち、はじめの90°回転はATPの結合によって起こるが、30°回転は何によって起こるか不明であった。本研究により、30°回転はADPの解離により起こることが示唆された。 2.葉緑体由来のF_1のγには、ジスルフィド結合の酸化還元による活性制御領域が存在している。この制御領域を好熱菌F_1に導入し、1分子観察を行った。酸化条件下では、還元条件下よりも停止時間が長くなっていることから、酸化したF_1は頻繁に長い停止状態になりやすいという特徴をもつことが分かった。本研究により、1分子の回転を人為的に変化させることができるようになった。 本研究により、F_1の活性と回転を1分子レベルで検出および制御することができるようになった。当初の計画とはアプローチの異なるものになったが、本研究の目的であるF_1の回転と活性のエネルギー共役機構の解明への足がかりとなったと確信している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Hirono-Hara Y, Noji H, Nishiura M, Muneyuki E, Hara YK, Yoshida M, Kinoshita KJr: "Pause and Rotation of F_1-ATPase during Catalysis"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 98. 13649-13654 (2001)
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[Publications] Brad D, Noji H, Yoshida M, Hirono-Hara Y, Hisabori T: "Redox regulation of the rotation of F_1-ATP synthase"J.Biol.Chem. 276. 39505-39507 (2001)