2002 Fiscal Year Annual Research Report
新規カルボアニオン転位を基盤とする生理活性天然物合成法の開発
Project/Area Number |
00J10271
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
井川 和宣 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鎖状立体制御 / シロキサン / カルボアニオン転位 / 分子内SN2'反応 / 光学活性有機ケイ素化合物 / 光学活性ホモアリルアルコール |
Research Abstract |
今回、我々は新規鎖状立体制御法としてジアルコキシシランのカルボアニオン転位の開発に成功した。 本転位はケイ素原子上にアリルオキシ基とベンジルオキシ基等の酸性プロトンを有するアルコキシ基を有する鎖状シロキサンに対して、強塩基を作用させることで進行し、生成物としてアリル基が酸素原子から炭素原子に転位したシラノールを与える。本転位の反応機構は酸性プロトンの脱プロトン化によって生じるカルボアニオンの分子内SN2'反応と考えることで理解できる。 本転位は基質のアリルオキシ基の置換様式によっては、生成するシラノールにジアステレオマーが生じるが、アリル基の立体化学に関わらずanti体が選択的に生成する。このことは、反応基質を立体選択的に調製する必要がないことを意味しており、合成手法としてその意義は大きい。 また、基質のケイ素原子上の立体化学によって、新たに生じる炭素不斉の立体化学が制御されることも明らかにしている。すなわち、ケイ素上の不斉に関して光学活性な基質を用いたところ、対応するシラノールが高ジアステレオ選択的に得られ、そのものをフッ素処理することでシリル基を除去したところ、対応するホモアリルアルコールが基質と同等の光学純度を有する光学活性体として得られた。 本転位は、単にホモアリルアルコールが得られるのみならず、一般に構築が困難とされる4級炭素不斉を制御できることから、生理活性天然物やその誘導体を合成するための素反応として有効と考えられる。現在、より多官能基化された系について検討している。
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