2002 Fiscal Year Annual Research Report
西部北太平洋におけるハダカイワシ科魚類の生活史戦略と個体数変動機構
Project/Area Number |
00J72501
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
杢 雅利 東京大学, 海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ハダカイワシ科魚類 / 個体数変動 / 移行域 / 移行域種 / 亜熱帯種 / レジーム・シフト / 生活史 / 寿命 |
Research Abstract |
1996年から2001年の5月および6月に三陸常磐沖の移行域を中心とした海域において、夜間表層トロールによるハダカイワシ科魚類の採集を行った。この採集で15属36種625,000個体の本科魚類が採集された。優占した移行域種のナガハダカおよびオオクチハダカ、亜熱帯種のアラハダカ、ススキハダカ、ゴコウハダカおよびマガリハダカの個体数の変動を解析した。その結果、移行域種のナガハダカは1996年から2001年にかけて個体数が減少傾向にあり、オオクチハダカは1998年まで減少傾向にあったのがその後増加した。亜熱帯種でススキハダカ属のアラハダカおよびススキハダカでは、同様な傾向が見られ、1999年まで個体数が減少傾向であったが、その後2001年にかけて増加に転じた。同じく亜熱帯種のゴコウハダカでは2000年まで、マガリハダカでは1999年まで低水準で個体数が変動していたがその後急激に増加した。ナガハダカを除くこれら5種では、この6年間に個体数が減少傾向または低水準で変動した期間から増加に転じる共通した傾向が観察され、これら個体数変動は北太平洋において1998年から1999年にかけて起こったレジームシフトと関連している可能性がある。このレジームシフトによる1999年以降の水温の上昇、餌となる動物プランクトン、特にカイアシ類の増加がハダカイワシ科魚類の個体数増加に影響しているものと推測された。 これまでの研究結果から、本科魚類の寿命は亜熱帯種で短く、より低水温に生息する亜寒帯種で長いことが分かっており、移行域種も亜熱帯種に比べれば寿命が長いことが推測される。よって、亜熱帯種は寿命が短いため、レジームシフトによる影響が個体数に速やかに現れるが、寿命がより長いと推測されるナガハダカなどでは、レジームシフトの影響が個体群の個体数の変動に現れるのに亜熱帯種に比べより長い時間がかかるものと推測した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Masatoshi Moku: "Spawning season and migration of the myctophid fish Diaphus theta in the western North Pacific"Ichthyological Research. 50・1. 52-58 (2003)
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[Publications] 齋藤暢宏: "本州沖太平洋から採集された中・深層漂泳性等脚類オナシグソクムシ属(甲殻上綱・等脚目・オナシグソクムシ科)について"日本プランクトン学会報. 49・2. 88-94 (2002)