1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01015119
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
濱田 洋文 癌研究会, 癌化学療法センター・基礎研究部, 研究員 (00189614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴尾 隆 東京大学, 応用微生物学研究所, 教授 (00012667)
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Keywords | 細胞運動促進因子 / ボイデンチェンバー / タンパク精製 / 癌転移 |
Research Abstract |
1.ボイデンチェンバを改良したtranswellを用いることにより、細胞のin vitroでの運動性を調べる方法を確立した。これによって、運動促進因子に応答して移動した細胞を定量的に測定する事が可能になった。 2.この方法を用いて各種ヒト癌細胞の培養上清に分泌される因子の腫瘍細胞運動促進効果について調べたところ、A549(ヒト肺癌細胞株)とStー4(ヒト胃癌細胞株)に強い腫瘍細胞運動促進効果が認められた。 3.得られた腫瘍細胞運動促進活性因子(モティリティファクター以下MFと略す)について、その生化学的性状と細胞生物学的機能を調べ、さらにMFタンパクの精製を試みた。 (1)A549由来、Stー4由来のMF、ともにほかの癌細胞や正常線維芽細胞だけでなく、自分自身の運動を促進する活性を持つ、autocrine motilityfactor(AMF)であった。 (2)このAMFはchemotactic活性とchemokinetic活性の両方の作用を示した(checker board解析の結果から)。 (3)ゲル濾過をはじめとする各種クロマトグラフィーの組合せにより、A549、Stー4それぞれの培養上清からAMFタンパクを部分精製する事に成功した。このAMFは複数の分子種から成り、既存の接着因子や成長因子、Liottaらの報告したMFなどとは明らかに異なった性質を示した。 (4)AMF活性は、pertussis toxin等により特異的な阻害を受けた。 4.部分精製したAMFを抗原としてAMFに対するポリクローナル抗体(兎)並びにモノクローナル抗体(マウス)を作製した。ポリクローナル抗体は、AMF活性の阻害効果を有した。モノクローナル抗体については、その抗原タンパクの決定、細胞生物学的活性の測定等につき現在検討中である。 考察・展望:癌の転移は原発巣から細胞が遊離して、血管あるいはリンパ管の外へ出てゆき、新たな腫瘍巣をつくる過程である。転移の過程は、癌細胞の運動・移動が主体の現象であり、転移に関与する色々な因子は、結局はこの細胞の運動と移動に影響する因子であると考えられる。私達がテーマとしたautocrine motility factor(AMF)は、癌細胞から分泌され、自分自身の運動性を促進する因子であることから、癌細胞の浸潤や転移に重要な役割を果たしているだろうと推測される。本年度の我々の研究成果によって、AMFのアッセイ系が確立され、AMFタンパクの生化学的・細胞生物学的性状が明らかとなった。また、AMFを多量に産生する細胞株を見出し、その培養上清から、生化学的手法により、AMFの部分精製を行うことに成功した。今後はAMFをさらに精製して、部分構造の決定、遺伝子のクローニングによる全構造決定へと進めて行く予定である。また、AMFをターゲットとした癌の治療法として、AMFに対するモノクローナル抗体の開発、AMF系の阻害に働く薬剤の開発・スクリーニングなど、多方面での応用を計画している。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Hamada,H.,Koenuma,M.,Takamori,R.,and Tsuruo,T.: "Tumorーderived motility factor from human adenocarcinoma A549 cells"