1989 Fiscal Year Annual Research Report
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01300020
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
佐原 眞 奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究指導部長 (20000466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 裕子 埼玉大学, 教養部, 助教授 (40107462)
松井 章 奈良国立文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (20157225)
西本 豊弘 国立歴史民俗博物館, 考古研究部, 助教授 (70145580)
中野 益男 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (30111199)
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Keywords | 古環境復原 / 残存脂肪 / 古代糖脂質 / 脂肪酸 / ステロ-ル / 酵素抗体法 / 胞衣壺 / 土器棺 |
Research Abstract |
先に申請者は、原始・古代遺物に微量ながら脂肪性成分が比較的安定した状況で残存し、その化学組成を現生の動植物のそれと比較することによって、動植物の種を認定する「残存脂肪分析法」を開発した。その成果により、目に見える形で遺存しない原始古代の動・植物の存在を実証し、原始古代の環境復原、衣・食・住の生活復元の研究の基礎が確立された。本研究では、残存脂肪分析法をさらに発展させ、新たに免疫手法を開発して、考古資料に遺存する動植物の種を特定し、原始古代の環境を復原しようとするものである。その結果、次の事が明らかにされた。 1.原始古代遺物の残存脂肪とその化学的特徴 草創期から弥生時代、古墳時代、奈良時代にかけての煮炊き用土器、貯蔵用土器、灯明皿を始めとする各種の土器、陶器、獣骨、墓の土、植物性炭化物から残存脂肪酸を抽出し、各脂肪クラスに分離した。従来の遊離脂肪酸、ステロ-ル、ワックス、炭化水素の他に古代糖脂質ともいうべき糖含有の脂肪が存在していた。 2.酸素抗体法(ELISA法)による古代糖脂質の特定 哺乳動物赤血膜は特異な糖脂質群で構成されている。その糖部分の糖鎖の構造は動物種ごとに異なる。この違いを抗原抗体反応によって読み取り、動物種を認定することができる。この方法を古代糖脂質の特定に適用した。 3.酵素抗体法による土器の用途の解明 平城京左京(外京)五条五坊十坪から出土した胞衣壺から、ヒト胎盤特有の糖鎖を持った古代糖脂質が検出された。胞依壺に納められていた動物遺体はヒト胎盤であることが精密に認定された。原川遺跡の土器棺からはヒト古代糖脂質が検出された。 これらの成績から、免疫手法による原始古代の環境復原は可能。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 中野益男ら: "平城京左京(外京)五条五坊十坪から出土した胞衣壺の残存脂質について" 奈良市埋蔵文化財調査概要報告書. 5-14 (1989)
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[Publications] 中野益男ら: "原川遺跡の土器棺に残存する脂肪の分析" 原川遺跡I. 17. 79-89 (1989)
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[Publications] 中野益男: "考古学資料に残存する脂質-馬場壇A遺跡の石器に残存する脂肪の分析-" 第4紀研究. 28(4). 337-340 (1989)
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[Publications] 松井章: "動物遺存体から何がわかるか" 新しい研究法は考古学になにをもたらしたか. 144-155 (1989)
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[Publications] 中野益男: "新しい研究法は考古学になにをもたらしたか「残留脂肪酸による古代復元」" クバプロ, 18-214 (1989)
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[Publications] 佐原眞: "米づくりと日本人(日本のあけぼの第4巻)" 毎日新聞社, 63 (1990)