1990 Fiscal Year Annual Research Report
2次元広視野電波パトロ-ルカメラによる高エネルギ-天体現象の研究
Project/Area Number |
01400006
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大師堂 経明 早稲田大学, 教育学部理学科, 教授 (10112989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大場 一郎 早稲田大学, 理工学部物理学科, 教授 (10063695)
相沢 洋二 早稲田大学, 理工学部応用物理学科, 教授 (70088855)
小松 進一 早稲田大学, 理工学部応用物理学科, 教授 (00087446)
小原 啓義 早稲田大学, 理工学部電子通信学科, 教授 (40063367)
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Keywords | 電波天文学 / 電波新星 / 高エネルギ-天体現象 / 電波バ-スト / 電波干渉計 / 広視野電波望遠鏡 / ディジタル信号処理 / FFT |
Research Abstract |
1.<2次元広視野電波パトロ-ルカメラの建設状況>___ー 90年度研究実施計画のうち、(1)アンテナの駆動、(2)デ-タ解析用ソフトの作成、(3)パルサ-分散消去フィルタ-の概念設計、を行うことができた。(4)さらに64台ある2.4mアンテナのカセグレン化の設計を行い、部分テストの段階で感度の向上が検証された。またディジタル複素振幅イコライザ-により、アナログ系の位相・振幅誤差を補正するプログラムが完成し小型アレイでシャ-プな像を得ることができた。 91年度は、まず大型アレイの各アンテナのラジオメ-タ-化を早急に実現し、小型アレイとつなぎかえて本観測に入る。 2.<2次元広視野電波パトロ-ルカメラの特徴>___ー 10年間の試作研究を経て、広い空の領域を電波で短時間に観測できる広視野電波パトロ-ルカメラ建設が実現した。これは次のような<3つの特徴>___ーをもっている。(1)世界で初めて,ナイキストレ-トの意味で2次元のリアルタイム像が得られた.すなわちパルサ-や放送の信号のような非エルゴ-ト的な信号に対しても多方向(64方向)を独立にかつ同時に観測できることを実証した.そしてその像合成には相関器を利用せず,新たに開発したディジタルレンズにより直接像合成を行った.(2)64入力に対して振幅・位相制御が可能になり,アナログ部の振幅・位相誤差を自動的に測定して補正まで行えるようになった.(3)"Maximum Redundancy Array"すなわち冗長度最大の干渉計の必要性が世界に理解され始めた. 3.<冗長度最少が電波干渉計の常識だった>___ー これらの成果は,1990年8月にプラハで開かれた国際電波連合(URSI)総会での招待講演で報告した.相関器(コリレ-タ)を使わずに像を作れるという話は,始めのうちはなかなか理解されず,像を作れるはずがないという疑問が繰り返し提出された.それは現在の電波干渉計が,全て相関器を利用したフ-リエ合成型(開口合成型)であるためである.この方式はケンブリッジ大学のライル達が開発したもので,少数のアンテナを使ってきめ細かい画像が得られる優れた方法である。その際,目標としてかかげられたのが"Minimum Redundancy"(冗長度最少)である。それは最小限のアンテナ数で,できるだけ画素数の多い像を得るために,等しい基線長の重複を最少にしようという主張である.1974年にライルはこれらの業績によりノ-ベル物理学賞を授賞したが、その影響も手伝ってこの"冗長度最少"が電波干渉計の常識になった。 4.<冗長度最大は非常識か?>___ー ところが早稲田大学のアンテナの配列は全く逆で,等間隔に8x8=64個が2次元に並んでいる。"Maximum Redundancy"(冗長度最少ではなく最大)となっているのである.このため,それまでの干渉計の常識から見て最大限の無駄をやっていると考える人が多数いた。しかしアンテナの配列の冗長度を最少にするという目標は、先に見たようにきめ細かい画素の像を得るという特別の場合を想定した最適化でしかない。これまではこういう点を深く分析せずに、相関器を使い冗長度最少である干渉計がどんな場合にも最良なものであると信じられてきた。 5.<冗長度最大を必要とする観測>___ー 電波新星探しや宇宙背景輻射の微少ゆらぎの観測のように、空間的角分解能はあらくてよいが感度を極めて良くする必要がある観測には、できるだけ冗長にアンテナを配置すればよい。その極限が早稲田大学の等間隔2次元アレイになる。"冗長度最少"をかかげたケンブリッジ大学も、現在はその逆をめざしている。1990年10月30に、ケンブリッジ大学のA.ヒ-ウィッシュ教授が早稲田大学をおとずれ干渉計のシステムを半日かけて熱心に見て回った。ヒ-ウィッシュはパルサ-の発見によりライルとともにノ-ベル賞を授賞したが、フ-リエ合成型の干渉計の開発にも貢献している。"冗長度最少"の提唱者であるため、その適用限界もよく認識していて、"冗長度最大"で相関器の無い早稲田大学の"非常識"な電波干渉計を大変気に入ってくれた。世界ではこれまでとは逆に"冗長度最大"をめざす干渉計が計画され始めている。早稲田大学では10年前からそのような計画をスタ-トさせ、特に冗長度最大の場合に相関器よりはるかに有利なディジタルレンズの開発もすすめてきた。我々のとってきた研究方向の正しさは、この1年の国際会議[国際電波連合(URSI)総会(8月プラハ)、及び干渉計シンポジウム(10月ソコロ、ニュ-メキシコ州)]ではっきり示された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Daishido: "220 GOPS FFT Based Digital Lens in Array Telescope(invited)" XXIII General Assembly of the International Union of Radio Science (URSI)/Abstract/Comission J.Radio Astronomy (Praha). J1-1 (1990)
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[Publications] 大師堂 経明: "220GOPSディジタルレンズによる非エルゴ-ト的信号電波源の結像" 国立天文台研究会「天文学とスパ-コンピュ-ティングー超大規模画像解析とシミュレ-ション」ワ-クショップ集録. 30-32 (1990)