1989 Fiscal Year Annual Research Report
日本における中国山水画受容の問題ー特に浙派系絵画の影響について
Project/Area Number |
01450008
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
横田 忠司 多摩美術大学, 美術学部, 助教授 (20063779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 秀実 多摩美術大学, 美術学部, 講師
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Keywords | 浙派系絵画 / 載進・呉偉画系 / 狂態邪学 / 尚南貶北論 / 日明・日清交渉 / 室町水墨山水画 / 江戸絵画 / 文人画 |
Research Abstract |
本年度は次の4つの研究を行った。 1.浙派系絵画の概要の把握ーー浙派系絵画の日本絵画への影響を考察するには、鈴木敬氏の『明代絵画史研究 浙派』に見える浙派を載進・呉偉画系の画人と狂態邪学の徒の外にその周辺画家を含んだ流派と見做す柔軟性のある説が適切なので、これに従って画家と作品を決定した。作品の写真資料は後述する調査旅行で得たものの外に日本出版図書と中国出版図書の中から浙派系・浙派的作品をできるだけ集めた。 2.浙派系絵画が日本に導入された時期及び伝来状況の問題ーー理論的には舶載は室町時代から江戸時代にかけて日明・日清交渉を通じて継続的に行われたと想像できる。これを実証するには実作品の調査と文献史料の裏付けが必要である。ために調査旅行の外に「探幽縮図」と江戸の画論類の中から浙派関係の史料を集めた。 3.浙派系絵画が日本の山水画に及ぼした影響の問題ーー概略としては、まず室町後半期に浙派系絵画が宋画の名目の下で舶載され、水墨山水画の展開に造形原理として大きな影響力を発揮したと思われる。次の挑山時代にもその可能性はあるがまだ不明。江戸時代に入るとかなりの数の浙派系絵画が日本に導入されたらしく、寺院・大名家・市井に数多くの作品が所蔵されていたことが文献史料から推測できる。江戸の一部の文人知識人は既に明末の尚南貶北論や浙派論を知っていた。にもかかわらず文人画の中に浙派風の作品さえある。江戸絵画は問題が多岐に及ぶので、今後さらに検討を加えてゆく。 4.調査旅行ーー昨年12月の京都調査旅行を始めとして、京都・北陸調査旅行、大分・広島・京都調査旅行等を実施した。調査結果は現在整理中。
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