1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01450057
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
橋口 倫介 上智大学, 文学部, 教授 (80053453)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 宣明 上智大学, 文学部, 教授 (30053531)
シロニス R.L. 上智大学, 文学部, 教授 (60053500)
ペレス F. 上智大学, 文学部, 教授 (30053466)
リーゼンフーバー K. 上智大学, 中世思想研究所, 教授 (60053633)
大谷 啓治 上智大学, 文学部, 教授 (30053557)
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Keywords | カロリング・ルネッサンス / 初期スコラ学 / 修道院文化 / 学問論 / 形而上学 / 倫理学 / アウグスティヌス主義 / アリストテレス主義 |
Research Abstract |
本研究は西洋中世における学者の自己理解・精神性と当時の学問観・諸学問の仕方との関係を解明することを目的とするが、本年度は12世紀末までの発展が研究テ-マであった。中世の学問観は学問論や諸学問の区分論という体系的な形で行なわれ、教父たちによって伝承されてきた古代の学問観を出発点に展開されてきたことが、まず明らかにされた。その上で1.古代末期のキリスト教世界における学問観が研究され、そこで異なった三つの形態が区別された。すなわち、(1)中世に多大な影響を及ぼしたアウグスティヌスの学問論とキリスト教的学問理念、(2)アリストテレスから着想を得たボエティウスの認識論的学問論、(3)セビリヤのイシドルスによって中世前期へと媒介されたストア学派の学問論である。2.9世紀のカロリング・ルネッサンスにおける学問の復興が研究され、その政治的社会的背景と宗教的意義づけが検討された後、二人の代表的な学者の学問観と彼らの精神性との関係を明確化することができた。すなわち、(1)ラバ-ヌス・マウルスによってアウグスティヌス的学習理念に基づいた神学中心の学問観が聖職者養成という当時の文化にとって最も重要な実践的課題のもとに構成され、又(2)ヨハンネス・スコトゥス・エリウゲナによって新プラトン主義的な学問体系が、純粋に理論的・形而上学的関心のもとに形成されていた。10世紀・11世紀の前半における学問の停滞が克服された後、3.11世紀末・12世紀に学問論が二つの異なった流れで展開されるようになった。(1)修道院文化において技術的な諸学問がサン・ヴィクトル派のフ-ゴ-により初めて認められ、実践的な学問に重点を置く学問論が登場したのに対し、(2)アラブ学問のもとでドミニクス・グンディサリ-ヌスによるアリストテレスの自然学を取り入れた科学的論的学問観が詳細に展開され、それが本研究の二年目のテ-マとなる盛期スコラ学の学問論の道を開くこととなった。
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Research Products
(16 results)
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[Publications] K.リ-ゼンフ-バ-: "ボナヴェントゥラの自由論" ボナヴェントゥラ紀要. 第6号. 1-41 (1990)
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[Publications] K.リ-ゼンフ-バ-: "サン・ヴィクトルのフ-ゴ-の学問観" 上智大学中世思想研究所紀要 中世研究(「中世の学問観」). 第9号. (1991)
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[Publications] 橋口倫介: "騎士修道会の創設と日常生活" 上智大学中世思想研究所紀要 中世研究(「中世の修道制」). 第8号. (1991)
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[Publications] 橋口倫介: "フロアサ-ルの学問観" 上智大学中世思想研究所紀要 中世研究(「中世の学問観」). 第9号. (1991)
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[Publications] 大谷啓治: "シャルトル学派の学問観" 上智大学中世思想研究所紀要 中世研究(「中世の学問観」). 第9号. (1991)
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[Publications] 大谷啓治: "コンシュのギョ-ムの「宇宙の哲学」" 上智大学中世思想研究所紀要 中世研究(「中世の自然観」). 第7号. (1990)
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[Publications] F・ペレス: "洞窟の比喩とその意味" 上智大学哲学科紀要. 第15号. 1-50 (1989)
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[Publications] F・ペレス: "モ-ゼス・マイモニデスの学問観" 上智大学中世思想研究所紀要 中世研究(「中世の学問観」). 第9号. (1991)
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[Publications] R・L・シロニス: "中世思想における理性と信仰との関係の特徴をめぐって" カトリック研究. 第56号. 35-63 (1989)
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[Publications] R・L・シロニス: "スコトゥス・エリウゲナの学問観" 上智大学中世思想研究所紀要 中世研究(「中世の学問観」). 第9号. (1991)
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[Publications] J・フィルハウス: "中世における古典文学" 上智大学中世思想研究所紀要 中世研究(「中世における古代の思想」). 第4号. (1990)
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[Publications] J・フィルハウス: "ドイツのルッペルトの学問観" 上智大学中世思想研究所紀要 中世研究(「中世の学問観」). 第9号. (1991)
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[Publications] 鈴木宣明: "ラバ-ヌス・マウルスの学問観" 上智大学中世思想研究所紀要 中世研究(「中世の学問観」). 第9号. (1991)
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[Publications] 鈴木宣明: "メヒティルト・フォン・マグデブルクの「神性の流れる光」ーそのカリスマ的霊性神学" 上智史学. No.34. 62-98 (1989)
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[Publications] 渡部菊郎: "トマス・アクィナスの学問観" 上智大学中世思想研究所紀要 中世研究(「中世の学問観」). 第9号. (1991)
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[Publications] 上智大学中世思想研究所編: "中世の学問観" 創文社, (1991)