1990 Fiscal Year Annual Research Report
放射冷却条件下における傾斜農地の局地的低温発現機構に関する研究
Project/Area Number |
01480087
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鈴木 義則 山口大学, 農学部, 教授 (70081495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 誠而 山口大学, 農学部, 助教授 (80038299)
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Keywords | 局地的低温発現 / 斜面下降気流 / 熱画像解析 / 放射冷却 / 揺らぎ現象 / 冷気流 / ロ-ル状対流 / 微気象 |
Research Abstract |
盆地、傾斜農地などの複雑地形で発現する局地的低温は、放射冷却条件の下で卓越するとともに、温度の垂直分布が逆転層で特徴づけられるものとなる。このとき下降してくる気流の熱的特性の解釈が異なり、凍霜害の恒久的対策方法に対する考え方が正反対となる混乱が現存する。筆者らは「斜面下降気流の低地部に対する熱的作用の性格は時核によって変わり、日没前後は冷気流として、夜半以降は放射による冷却を抑制する作用を果たすことが多い」という仮説をたてている。 そこで仮説の検証と低温発現機構を解明するために、主観測対象地として宇部市の傾斜茶園、副対象地として学内の山地を選び、現地に下降気流の動きや地中熱流を人為に変化させる種々の実験装置もセットした上で、赤外放射温度計(熱映像装置)と通常のデ-タロガ-により気象観測を行った。これまでの解析結果は我々の仮説を裏付けるデ-タが多く出ており、特に重要な点である夜半の下降気流が低地部に対しては冷却緩和に作用している場合が多いことを見いだした。次に、地被の構造がモザイク的である場所の表面の冷却について実験とシミュレ-ション解析から、熱容量と熱拡散係数の差が冷却に寄与することが大であることを明らかにした。そこでは、植物、例えば蒲鉾状の茶株の存在は地中からの熱補給を遮断するため、とくに表層部の冷却が進み、冷熱源となることが示された。また、斜面を上下に直線的に結ぶ裸地面の道と水平方向に茶株の間を抜ける道との上で、気温の垂直分布を測定した結果、下降気流の強い方が高温であった。風速が弱まる所の冷却の強まりが確認された。 初年度に表面温度分布の中に「ゆらぎ現象(ロ-ル状対流)」を世界で初めて検出したが、今年度も再確認できた。ただし、この興味ある事実をさらに詳細かつ定量化するには、新たな測器の準備と研究の展開が必要である。
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[Publications] 早川 誠而: "斜面下降気流と気層の多層構造モデル" 気象利用研究. 3号. 79-81 (1990)
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[Publications] 早川 誠而: "斜面下降気流の多層構造モデル" 中国・四国の農業気象. 1号. 110-114 (1989)
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[Publications] 鈴木 義則: "傾斜地の放射冷却条件下の熱環境と下降気流" 日本農業気象学会局地気象研究部会報. 3号. 7-10 (1989)
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[Publications] 鈴木 義則: "傾斜地の局地冷却発現に関する研究" 日本農業気象学会全国大会講演要旨集. 平成2年度. 26-27 (1990)
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[Publications] 早川 誠而: "赤外画像がとらえた局地気象現象 一夜間安定時に形成されるロ-ル状対流" 日本農業気象学会全国大会講演要旨集. 平成2年度. 28-29 (1990)
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[Publications] 鈴木 義則: "赤外熱映像による気象現象・気象改善効果の確認例" 中国・四国の農業気象. 3号. 55-56 (1990)