1989 Fiscal Year Annual Research Report
大腸癌におけるラミニン,コラ-ゲン(IV)の免疫組織学的研究(特に転移との関係)
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01480336
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
松田 泰次 近畿大学, 医学部, 講師 (10122110)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 隆一 近畿大学, 医学部, 助手
坂口 隆啓 近畿大学, 医学部, 助手
波江野 善昭 近畿大学, 医学部, 助手
安富 正幸 近畿大学, 医学部, 教授 (60028438)
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Keywords | 癌転移 / ラミニン / 基底膜 / 免疫組織学的染色 / 静脈侵襲 / 培養細胞 / YIGSR / 転移抑制 |
Research Abstract |
大腸癌原発巣におけるlamininの免疫組織学的染色(ABC法)を行ない癌の侵潤転移におけるlamininの役割および静脈侵襲判定について検討した。1.大腸癌全体の癌腺管基底膜のlaminin陽性率は42.7%(82/192)、肝転移再発群71例のlaminin陽性率は81.7%、局所再発・腹膜播種あるいは転移・再発なしの群ではそれぞれ22.2%、19.6%であった。癌腺管基底膜のlamininの免疫組織学的検討は癌の侵潤・転移におけるlamininの役割を解明するうえに重要であるばかりでなく肝転移・再発予測因子としても重要であると考えられた。胃癌組織でも同様の傾向が認められ後述する論文にて公表した。2.laminin染色による従来の染色法(HE,EVG)と比較し77.9%(74/95)の高い陽性率を得た。癌組織内と癌周囲静脈侵襲を肝転移率から比較検討すると癌周囲陽性例の肝転移率は47.5%と前者の29.2%に比べ肝転移とより相関した。これを侵襲静脈の大きさ、個数、部位に分けて検討すると、大きさでは50μm以下でも肝転移予測に重要であり、個数では5個以上で肝転移率は60%と高率であった。侵襲静脈の認められる最も深い部位(“深達部位")は、肝転移率と正の相関を認めた。侵襲静脈の有無だけでなく、個数、“深達部位"などを考慮することにより、さらに肝転移・再発予測能が高まることが判明した。3.以上述べた癌腺管基底膜のlamininとlaminin染色による静脈侵襲の両者を組合わせると肝転移・再発予測がさらに正確に判定できることが証明された。動物に移植した腫瘍細胞(ヒト腺癌由来のKUM LKー2、KUM LKー17、Lewis肺癌細胞、colon26細胞およびVX2細胞)におけるlamininの局在に関する免疫組織学的染色を行ない高転移株と低転移株、あるいは原発巣と肝転移巣におけるlamininの局在について比較検討し、さらにこの肝転移モデルを用いてlamininのコア配列を持つYIGSRの転移抑制効果および病理組織学的研究を施行中である。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] 松田泰次: "大腸癌の免疫組織学的検討からみた癌の侵潤・転移におけるラミニンの役割" 医学のあゆみ. 141. 194 (1987)
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[Publications] 松田泰次: "胃癌におけるLamininの免疫組織学的研究、組織型および転移との関係" 日本外科学会雑誌. 90. 1126 (1989)
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[Publications] 松田泰次: "大腸癌再発様式よりみた手術と補助療法の問題点" 臨床と研究. 66. 711-719 (1989)
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[Publications] 松田泰次: "大腸癌肝転移の防止対策" 外科. 51. 903-913 (1989)
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[Publications] 松田泰次: "胃癌におけるlamininの免疫組織学的検討ー組織型および転移とlamininとの関連ー" 日本消化器外科学会雑誌. 22. 2778-2783 (1990)
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[Publications] 久保隆一: "Lamininを用いた癌の静脈侵襲に関する研究" 日本外科学会雑誌. 90. 455 (1989)
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[Publications] 久保隆一: "Lamininの免疫組織化学による大腸癌の静脈侵襲判定と肝転移" 日本大腸肛門病学会雑誌. 43. 172-174 (1990)
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[Publications] 久保隆一: "Lamininの免疫組織化学の静脈染色への応用と癌の静脈侵襲判定における意義" 近畿大学医学雑誌. 15. (1990)
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[Publications] 波江野善昭: "大腸癌原発巣と肝転移巣におけるlamininの局在に関する免疫組織学的検討" 近畿大学医学雑誌. 14. 361-372 (1989)
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[Publications] 坂口隆啓: "胃癌原発巣および転移巣におけるlamininの免疫組織学的研究" 近畿大学医学雑誌. 14. (1989)
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[Publications] 安富正幸・松田泰次: "新外科学大系ー結腸癌" 中山書店,