1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01510039
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Research Institution | Seijo University Junior College |
Principal Investigator |
土居 淑子 成城短期大学, 教授 (20054497)
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Keywords | 漢代画像石 / 東京国立博物館 / 天理参考館 / 山口コレクション / 関野貞 / 満州国成立 / 端方 / 羅振玉 |
Research Abstract |
日本に所蔵される中国の漢代画像石は、東京国立博物館に14石、天理参考館に7石、藤井有鄰館に3石、大阪市立美術館に5石、滴翠美術館に2石、神戸の山口家に2石、福岡市博物館、大原美術館、書道博物館、戸栗美術館、東大文学部等に各1石、その他個人所蔵といわれるものを合わせるとほぼ40石前後にのぼる。これらのうち書道博物館と東大の蔵石以外はほぼ写真撮影及び拓本をとる作業を行ない、資料化した。書道博物館は写真、拓本とも不許可であった。調査の結果まず第1に出土地の最も明確なものは、東博の全石と天理の昇鼎図を刻した2石、それと同地出土と伝えられる戸栗美術館の1石、滴翠美術館の1石、福岡市美術館の1石などが山東画像石であり、藤井有鄰館の西王母、東王父画像石もほぼ山東画像石であると思われること、その他は山口コレクションに陜北、四川、また天理の蔵石中に江蘇徐州と推測される刻石が含まれていることが明らかとなった。但し山口コレクションについては真疑に問題の残るものも含まれている。第2に建築資材としての刻石の種類であるが、祠堂、墓室の扉石、〓石、壁石、〓石などの各種が確認された。第3は石質で、大部分は水成岩、火崗岩であるが、大阪市美の1石のみ砂岩であり、珍らしい。第4は日本に将来された時期と経緯であるが、明治40年に関野貞が山東の考古調査をしたのをきっかけに、大正から昭和の初頭つまり大戦前までの間に全石が将来されている。その経緯は当時関与した人達が既に世を去った今、明らかにしがたいが、1932年満州国成立と密切な関係があることが明らかとなった。記録をたどると端方や羅振玉などの中国人、内堀維文、蔵田信吉といった日本人の名、山中商会などの古美術商の名が浮び上ってくる。まさに日本の近代史にかかわる問題である。画像石自体は今回の調査結果を、中国の舞台に置き変えた復原研究のための基礎的資料となしうるものである。
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