1989 Fiscal Year Annual Research Report
老年期の自殺とその家族的背景に関する社会病理学的研究
Project/Area Number |
01510114
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
松本 寿昭 大妻女子大学, 家政学部, 助教授 (00095481)
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Keywords | 自殺 / 葛藤 / 社会病理 / 家族病理 / 孤独 / 自己破壊行動 |
Research Abstract |
平成元年度の研究実施計画に基づき対象地域において訪問面接調査および関係資料の収集を行った。調査の一部は、現在も継続中であるが、これまでに明らかになった研究成果の概要は以下の通りである。 1.自殺率からみた地域類型 老年期(65歳以上)の自殺の動向を人口動態統計特殊報告(厚生省)から、1974年・1975年・1980年・1985年の各年度について検討した結果、一貫して高自殺率を示すのは、岩手・秋田・新潟・富山・岐阜・島根の各県であり、いづれも近年人口の減少率および老齢化が著しく、また過疎地域を多く含む地域である。さらに、これらの地域における自殺の原因として、身体的には「病苦」、心理的には「家族の内外における孤立と孤独」、社会的には「過疎化と老齢化」等が指摘できる。 2.老年期の自殺とその家族的背景 対象地域における老年期の自殺について、(1)、自殺の原因・動機別では、病苦と厭世による逃避的な生き方がみられること。(2)、自殺の場所では、自宅内が圧倒的に多く、その約半数は居間もしくは寝室等身近な生活の場で自殺が行われていること。また手段別では、縊死が圧倒的に多いこと。(3)、自殺の月別では、5月〜8月と10月〜11月の春と秋の農繁期直後に多く、冬期は少ないこと。時間別では、12時〜18時の午後と0時〜6時の深夜に多く、家族の集まる18時〜24時は少ないこと。(4)、世帯類型別では、老核家族世帯より二世代直系家族世帯、さらに二世代直系家族世帯より三世代直系家族世帯等家族人数の多い世帯の老人がより多く自殺しており、また自殺老人の多くは家族員との間に、価値観や生活様式の相違からくる意識のズレや葛藤、家族集団からの孤立と孤独等の問題を指摘することが出来る。
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