1990 Fiscal Year Annual Research Report
北部九州及びその離島におけるシャ-マン的職能者の研究
Project/Area Number |
01510185
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Research Institution | Nagasaki University Faculty of Liberal Arts |
Principal Investigator |
福島 邦夫 長崎大学, 教養部, 助教授 (60189933)
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Keywords | トウニン.ホウニン.ダイニン / シャ-マン的職能者 / 稲荷 / おみくじをとる / 血脈相承型 / カゼ / 野狐つき / 神上げ |
Research Abstract |
北部九州の福岡,佐賀,長崎県(本土及び島嶼部)にはトウニン,ホウニン,ダイニンなどと呼ばれるシャ-マン的職能者が分布する。本年度(平成二年度)は長崎市,長崎県北松浦郡,壱岐島,平戸島,生日島,佐賀県西松浦郡,福岡県久留米市などで約二十名近い職能者に面接調査を行い、彼等のライフヒストリ-,信仰,祭神,祈祷活動,病因論などに関しての資料を収集した。六十代を超えた女性が多いが男性も見られる。ライフヒストリ-を見ると病苦や夫との死別などの人生の危機の後神が乗り入るという体験をし、自宅に神仏を祭る祭壇をつくり,巫業に入るという形のものが多い。しかし、その他家系の中のある人物(女性が多い)に必ず稲荷神が降りるという伝承を持つものがあり、「血脈相承型」のものがかなり見られる。また,師から導かれるかたちでトウニンになっていく師資相承型も多い。憑依を核にした主婦の間の信仰カルトといった側面も見られる。信仰,祭神は稲荷を中心にした神道系のものとそれに不動信仰や竜神などの「仏教系」の諸仏をまつるものの二種あり,後者は比較的都市部に多い。祈祷活動には「オタズネ」と「神アゲ」「霊感アゲ」等といわれるものの二種ある。依頼者が運勢や行方不明者についてオタズネをすると神霊との直接交流により答えることが前者であり,(おみくじをとるともいう。)後者は祭られていない先祖や死霊,また神仏のある時、病気になったり、家族の問題になったりする。その時に神霊と直接交流をして、その言い分を聞き,(ここにシャ-マン的職能者の本領がある。)それに対して、「オコトワケ」というおわびの言葉を述べて帰ってもらうこと,(これを「神上げ」とか「霊感上げ」,などと称する)が行なわれる。病因論としては「カゼがつく(を負う)」ということがよく説かれる。野狐がつくとも信じられ、それを落とす祈祷なども行なわれていたという。
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