1991 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01510204
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Research Institution | University of the sacred heart |
Principal Investigator |
高牧 實 聖心女子大学, 文学部, 教授 (20100985)
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Keywords | 東北地方 / 城下町 / 祭礼 / 自治 / 弘前 / 八戸 / 鎮守社 |
Research Abstract |
本年度は,東北地方内陸部の弘前と会津若松,太平洋沿岸の八戸について,その社会の特質を祭礼を通して検討した。弘前については,「城下町弘前における祭礼」と題して,『聖心女子大学論叢』第78集に発表した。会津若松と八戸についても,補充調査を行なって,研究のまとめを始める予定である。 すでに研究のまとめを行なった秋田、酒田という日本海沿岸の都市と比較して,弘前城下の町人町の成立が異っており、その経済的発展が遲れていて,町人の自治機能が弱少であったことが知られる。町人町惣町の鎮守社を有さない町人は,領主津重氏の鎮守社八幡宮の祭礼に動員され,町奉人や家臣たちの祭礼行列に台輪などを出していた。 会津若松においては,領主保科(松平)氏が鎮守社の諏訪神社の別当・神宮を通して領内の神宮を統制しており,鎮守社の祭礼を営んでその祭礼行列に町人の参加を許していた。八戸においても,領主南部氏がその鎮守社の祭礼に家臣を動員していたが,町人にも参加を認めた。会津若松の町人町における経済発展は小さく,八戸においても,東廻海運による港の役割が次第に大きくなったものの,町人町の経済発展はそれほど伸びなかった。両町の町人は,ともに経済発展を希求し,領主の鎮守社の祭礼に加わって,町人町の活性化をはかろうとした。こうして町人町の活性化を時には実現したが,祭礼の盛大化にともなう経済的負担の増大によって,町人の祭礼参加をしばしば中止していた。領主も参加中止を命じており,町人町の活性化が進んでいない。 両町の町人の自治機能が弱小で,町人町惣町の鎮守社を有さず,そうした祭礼を営んでもいなかったのである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 高牧 實: "祭礼にみる城下町久保田(秋田)" 比較都市史研究会創立20周年記念論文集『都市と共同体』下巻(名著出版). 299-322 (1991)
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[Publications] 高牧 實: "城下町弘前における祭礼" 『聖心女子大学論叢』. 78. 17-46 (1991)
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[Publications] 高牧 實: "港町酒田と祭礼" 渡辺信夫編『近世日本の都市と交通』(河出書房新社). 155-176 (1992)