1990 Fiscal Year Annual Research Report
京都現存の木活字と古活字版との関係についての資料的研究
Project/Area Number |
01510266
|
Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
宗政 五十緒 龍谷大学, 文学部, 教授 (70081023)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺谷 隆 龍谷大学, 文学部, 教授 (40081020)
|
Keywords | 出版(しゅっぱん) / 印刷(いんさつ) / 古活字(こかつじ) / 木製活字(もくせいかつじ) / 円光寺(えんこうじ) / 伏見版(ふしみばん) / 駿河版(するがばん) / 慶長文化(けいちょうぶんか) |
Research Abstract |
平成1年度に引続いて円光寺(京都市左京区一乗寺)に現存する近世木製活字を整理し、調査している。量が厖大であるのと、整理それ自体も今日まで全く行なわれていなかったために、整理に多大の日数と人手とを費やしたが、整理それ自体は平成3年3月の時点で、主要なものは大凡終了することができた。しかし、細部に亙る整理は未だ終了していない。整理と並行して行なって来た調査によって、現在(平成3年3月)の時点で、若干の新しい知見を得た。その主なものを記すとーー。 (1)円光寺現蔵の木製活字(以下、円光寺活字と呼ぶ)の個数は概算5万2千個である。その活字を大きく分類すると、(a)漢字本文用、(b)漢字割注用(c)片仮名本文用、(d)その他、となる。その他、の中には頭注用陰刻活字も見られ、これは伏見版『孔子家語』の出版に使用されたもの、と断言して誤りないと推定できる。 (2)円光寺活字の漢字活字の寸法は、伏見版の印刷面の寸法と対比させてみると、全く一致することが認められる。 (3)円光寺活字のうち最も早い時期に製作されたものではないかと推定される活字から墨書が発見された。この墨書はその活字をもと所有していた彫字工の名を示すものであろうと推定される。この墨書の発見によって慶長期の古活字版の出版事情が広い範囲に亙って判明する。この発見は出版文化史研究上、はなはだ大きい意義があると考える。伏見版と駿河版との関係もこれによって実証できる。 (4)木活字版摺刷に使用された摺り盤2面を新しく発見した。これもまた近世初期の製作と推定される。この発見によって古活字版の摺刷方法が実証的に解明できる。
|