1989 Fiscal Year Annual Research Report
『ドイツ現近代文学における黙示録的想像力のはたらきと変遷』
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01510288
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
安達 忠夫 埼玉大学, 教養学部, 教授 (20011348)
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Keywords | 黙示録 / ヨハネ黙示録 / 終末論 / 世紀末 / 末世 / 想像力 / 没落 / 西欧意識 |
Research Abstract |
この一年間におこなってきたことは、ヨハネ黙示録からドイツの宗教書や文学書に至るまで、要所要所にあらわれる黙示録的なイメ-ジや語彙をデ-タベ-ス化しつつ、表面的には見えにくい内的な連関を、薄紙をはぐようにして丹念に読みとっていく作業であった。世紀末やひとつの時代の終焉に際して、黙示録的な要素が噴出してくることは、従来からすでに指摘されてきたが、その場合、黙示録的な「イメ-ジ」と「語彙」があたかも鉄道線路の転轍機のように意識の方向をさし示す重要な役割をはたすことが、このような具体的な場に即した研究によってあきらかになっている。宗教改革の時代に関しては、文献入手の制約が大きすぎて断念せざるを得なかったため、一般的な研究の成果を踏まえるしかないのが残念であるが、今後は一層、個々の文学作品の分析に向かうことが大切であることがはっきりした。現在は、シュペングラ-の『西欧の没落』を手がかりに、第一次世界大戦前後の世紀末的様相をさぐる作業をすすめつつある。二十世紀に突入しながら、なお前世紀,終末論的要素をひきずっていたのは何故であろうか。わたしたちの過ごしてきた20世紀という時代全体が、終末論的意識の集大成といってもいい面を露見しつつある。論文にまとめるには到らなかったが、現在準備中。今後は20世紀の文学の分析を中心に作業をすすめ、もう一度、ポイントをチェックすることになる。デ-タベ-ス化した語彙集をさらに充実することも併行して行われている。
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