1991 Fiscal Year Annual Research Report
大正期から昭和期における町村制を中心とする地方制度の立法過程に関する研究
Project/Area Number |
01520005
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山中 永之佑 大阪大学, 法学部, 教授 (70028009)
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Keywords | 市制 / 町村制 / 市会 / 町村会 / 地方改良運動 / 地方制度 / 普通選挙法 / 治安維持法 |
Research Abstract |
国立国会図書館、国立公文書館、市政専門図書館における、大正期から昭和初期における町村制を中心とする地方制度の立法過程に関する資料の調査、収集、分類を行うとともに、和歌山市、大阪市、高槻市、羽曳野市の在地資料の調査も行い、これらの成果をふまえて、研究をすすめた。その結果、大正期において実施される町村制は、明治44年制定の町村制であることから、まず明治44年の町村制について研究を行ったが、地方制度を構造的に把握するためには、従来から研究のすすんでいる町村制と同時に、研究の遅れている市制についても研究をすすめる必要を感じ、明治44年市制についても大阪市を事例として考察した。そして、市制には明治21年市制以来、町村制と異なる支配構造があり、市長は名望家であるよりも行政専門官僚たることが求められていたが、明治44年市制・町村制は、両者を中軸として展開された地方改良運動とともに、日本帝国主義国家の住民=国民統合方式たりえたことを実証した。ついで、この市制・町村制が改正される大正10年、同15年、昭和4年の地方制度改革を、大正14年の普通選挙法、治安維持法の立法過程との関連で考察し、(1)両者は相互に密接不可分な関係にあること、(2)大正15年、昭和4年の地方制度の改正、なかでも町村制改正は、明治44年町村制を中軸とする国民統合方式のいちおうの完成を示すものであること、さらに(3)このような国民統合方式によって把握できない労働者や農民の運動を、大正13年の小作調停法、同15年の労働争議調停法が「丸く納める」役割を果したこと、(4)このような調停法によっても把握できない労働者、農民の反体制運動を、治安維持法を中軸とする諸弾圧立法が鎮圧する役割を担うという法構造が大正期から昭和年期にかけての日本帝国主義国家の法構造であったことを明らかにすることができた。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 山中 永之佑: "日本近代地方制度史研究の課題" 地方史研究協議会編『都市周辺の地方史』(雄山閣). 305-315 (1990)
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[Publications] 山中 永之佑: "明治44年(1911)市制町村制改正と地方改良運動ー大阪市を事例とする考察ー" 立命館経済学. 39ー5. 34-92 (1990)
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[Publications] 山中 永之佑: "普選・治安維持法の制定と地方制度の改正(1)" 阪大法学. 40ー3. 1-48 (1991)
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[Publications] 山中 永之佑: "普選・治安維持法の制定と地方制度の改正(2・完)" 阪大法学. 41ー1. 1-130 (1991)
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[Publications] 山中 永之佑: "池上・関大阪市政の制度的基盤" 適塾. 24. 47-78 (1991)
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[Publications] 山中 永之佑: "近代日本の地方制度と名望家" 弘文堂, 365 (1990)
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[Publications] 山中 永之佑他: "和歌山市史第3巻(近現代)" 和歌山市, 891 (1990)