1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01540617
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
常木 和日子 大阪大学, 教養部, 助教授 (10127459)
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Keywords | 円口類 / ヌタウナギ / ヤツメウナギ / 比較解剖 / 系統発生 |
Research Abstract |
最も原始的な脊椎動物である円口類を構成する2群、メクラウナギ類とヤツメウナギ類の比較解剖学的研究を行っている。メクラウナギ類ではヌタウナギの成体、ヤツメウナギ類ではスナヤツメのアンモシ-テス幼生と成体を材料とし、パラフィン連続切片を作成、観察中である。 ヌタウナギでは鼻端部にある触手の構造が注目された。中心に軟骨片があり、そのまわりを三叉神経枝と思われる太い神経繊維の束がとり囲み、さらにその外側に大きな血洞が存在する。神経支配と血洞の存在に関して、この構造は哺乳類の震毛と比較できる。脊椎動物の頭部形成における三叉神経の意義と関連してさらに考察を進めている。 ヌタウナギの触手にみられた血洞は、広大な皮下血洞の一部であった。スナヤツメにも発達は悪いが頭部に皮下血洞がみられた。アンモシ-テス幼生にはこのような皮下血洞はなく、また原索動物のナメクジウオにも存在しない。従って血洞の存在は円口類の派生形質であり、近年の通説に反して円口類は単系統群である可能性も考えられる。またヌタウナギ、スナヤツメともに、鰓襄の周囲に大きな囲鰓血洞があった。リンパ系との関連においてもこれらの血洞の機能的、進化的意義が注目される。 円口類の骨格系は軟骨のみからなるが、軟骨の組織像には著しい多様性がみられた。ヌタウナギ、スナヤツメともに多くの軟骨は細胞間質に乏しく、また間質はアルデヒドフクシン等の通常の軟骨染色体色素に染まらなかった。細胞間質に乏しい点は、無脊椎動物の軟骨と類似している。またヌタウナギの後部基底軟骨は染色性の乏しい胞状細胞からできている特異なものであった。アンモシ-テス幼生の軟骨は成体とは異なり、アルデヒドフクシン好性の繊維の多いこれまた特異なものである。これらの観察結果から、脊椎動物において支持組織系がいかに発達、進化してきたかについて考察している。
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