Research Abstract |
根室層群浜中ー尾幌川層,厚岸層および床潭層の花粉・胞子の検討の結果,白亜紀最上部のマ-ストリヒト期の特徴を示す種類が多く見出され,白亜紀ー第三紀境界問題は平成2年度の研究をまって結論を得たいと考えた。先ず第一に,根室市昆布盛における床潭層の花粉・胞子群集を落石の床潭層のものと比較検討を行なった。11試料中9試料から羊歯植物・蘚類胞子,裸子植物花粉,被子植物花粉,菌類胞子,植物性微プランクトンなど746個体を検出した。菌類胞子および植物性プランクトンを除き,羊歯植物・蘚類胞子62種,裸子植物花粉54種,被子植物花粉60種,計176種を識別した。本層の花粉・胞子群集は落石の床潭層のものと比較できるものであり,その時代はマ-ストリヒト期である。胞子6新種,裸子植物花粉1新層3新種,被子植物花粉2新種については別に記載を行なう。霧多布層については礫岩層の発達が顕著で,泥質の細粒砕屑岩層は限られた分布を示している。霧多布では,西海岸付近で7試料を採集し,4試料から105個体の花粉・胞子その他を検出し,ユルリ島の7試料中4試料から267個体を検出した。これらから,羊歯植物・蘚類胞子57種,裸子植物花粉33種,被子植物花粉48種,計138種を識別した。本層の花粉・胞子中,床潭層および厚岸層に共通に産出する種類は52種あり,可なりの共通性を有しているが,これらは,大部分が出現期間の長い種類で占められている。本質的な大きな差異は,Aquilapollenitesの仲間の花粉が若干見られるが,マ-ストリヒト期を示す種類はない,Callistopollenites radiatostriatus,C.comisなどのマ-ストリヒト特有の種類が検出されない。新しくMagnoliaceae(モクレン科)の花粉が出現する。霧多布層の花粉・胞子群集の特徴は,上部白亜紀の特徴を残しながら第三紀特徴えの漸移的な性格をもつと考えらる。従って,床潭層と霧多布層の間に白亜紀ー第三紀境界を考えたい。
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