1989 Fiscal Year Annual Research Report
建築規矩術を中心とした建築構造技法の史的発展に関する研究
Project/Area Number |
01550485
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
岡田 英男 奈良大学, 文学部, 教授 (90090373)
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Keywords | 古代・中世の捻れ軒 / 平行軒の納まり / 近世の軒の手法 / 近世刊本の規矩本割 / 扇垂木の割付け技法 / 古代末の小屋組構造 / 中世・近世の小屋組の発展 / 桔木の出現と変遷 |
Research Abstract |
伝統的木造建造物、特に社寺建築は飛鳥時代に朝鮮半島から伝来して以来、奈良鎌倉時代に中国から影響を受けながら発展を続けたが、特に軒の納まりの変化、部材の比例を定める木割法の案出、屋根を支える小屋組構造の変化など技術的進歩が著しい。 今年度は特に資料の収集検討につとめたが、軒回りについては近世の木版刷による規矩木割りの指南書、現在刊行の解説書では垂木に反りなく、芽負・木負の隅の方だけに平行な反りを持つ平凡な手法のみを数えている。古代中性の遺構では芽負・木負の反りは内方まで長く、互に平行ではなく、隅木の反りにも移らず、垂木には反りがあり、論止垂木の納まりも古代末までは不完全で、各建物によって変化がありながら優美な軒反り、屋根の形を作っているが、近世になると次方に軒の納まりが規格的になってくる。この技術的変化の過程を研究しようとするのが目的の一つであるが、解体修理中の室町中期小山寺三重塔では修理関係者の調査によると平行軒で、この時期に完成に近い納まりも行われている。また近世の遺構にも中世的技法のなごりが見え、現存遺構の実例、近世刊行書の比較検討をさらに進め、軒回り技術の発展を明らかにする計画である。 小屋組についても技術的に著しく発展していることをすでに確認しているが、近世の専修寺如来堂では独特の架構法が見られるが、他にも同類の工法の実例があり、この技法の源流が室町次代までさかのぼることを予測しており、この解明にもつとめる計画である。特に軒回りが屋根荷重を負担せず、かえって小屋組から吊下げるようになるのでこのような工法の変化等、小屋組と軒回りの関連についても着目し検討している。
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