1990 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01550704
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
古川 猛夫 理化学研究所, 生体高分子物理研, 研究員 (90087411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊達 宗宏 理化学研究所生体高分子物理研, 研究員 (50087409)
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Keywords | 誘電緩和 / 非線形誘電スペクトル / 非線形導電スペクトル / 高分子 / ポリ酢酸ビニル / ポリエチレンオキシド |
Research Abstract |
前年度より開発してきた非線形複素誘電率の周波数スペクトルの高精度測定装置を完成させ,いくつかの高分子について測定を行った.以下に(1)シアン化ビニリテン共重合体,(2)ポリ酢酸ビニル,(3)イオン導電性高分子について得られた主な結果をまとめる. (1)シアン化ビニリテンは,酢酸ビニルとの共重合体において極めて大きな誘電率を示し,一般に非晶性であると信じられている.今回数種類の共重合体について非線形誘電スペクトルの測定を総合的に行った結果,3次の非線形誘電率がε_3^*=△ε_3/(1+iωτ_3)型の周波数スペクトルを示すこと,線形及び非線形の緩和強度△ε_1,△ε_3の値から計算される等価双極子モ-メントが極めて大きく,セグメント運動が10ー30個のモノマ-を単位として協同的に行われていることを見いだした. (2)ポリ酢酸ビニルは,これまで線形の誘電緩和が最も詳しく研究されてきた代表的な極性高分子であり,非線形誘電スペクトロスコピ-の確立には避けられない対象である.ほとんどの高分子がそうであるようにその非線形誘電性は小さいが,今回開発した高精度測定装置により測定が可能となった.その結果3次の非線形誘電率には,電歪効果による形状変化の寄与が混入し,これを差し引いた本来の非線形誘電率は値は小さいがシアン化ビニリテン共重合体と同様の振舞い示すことがわかった. (3)イオン導電性高分子として,従来から知られているポリエチレンオキシドに加え,今回エチレンオキシドの4量体を珪素で架橋した非晶性高分子を新たに合成した.これらに過塩素酸リチウムをド-プすると導電性が支配的となるが,非線形複素誘電スペクトルを測定すると,実部と虚部を入れ替え周波数を乗ずるだけで非線形導電スペクトルが得られる.今後詳細な解析により,キャリヤ-ホッピングの距離の評価や誘電分極を伴う導電機構が明らかにできると考えている.
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Research Products
(5 results)
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[Publications] T.Furkawa,M,Date,Y.Inaba and K.Matsumoto: "Nonlinear Dielectric Relaxation Spectra of polyvinyl Acetate" Polymer Preprints Japan. 39. 3713 (1990)
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[Publications] Y.Tajitu,Y.Ueno,T.Furukawa: "Nonlinear Conductive Spectra of IonーConducting Polymers II" Polymer Preprints Japan. 39. 3758 (1990)
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[Publications] T.Furukawa: "Nonーlinear dielectric relaxations of polymers" J.NonーCrystalline Solids. (1991)
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[Publications] Y.Tajitu,Y.Ueno,T.Furukawa: "Nonlinear Conductive Spectra of IonーConducting polymers III" Polymer Preprints Japan. 40. (1991)
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[Publications] 古川 猛夫: "応用物性 誘電的性質とその応用" オ-ム社, 33 (1991)