1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
01560212
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
竹村 暘 長崎大学, 水産学部, 教授 (70039725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白木原 国雄 長崎大学, 水産学部, 助教授 (90196618)
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Keywords | スナメリ / 分布 / 移動 / 生殖 / 成熟 |
Research Abstract |
長崎周辺の82の漁業協同組合と18の渡船航路でのアンケ-ト調査・聞き取り調査ならびに目視調査により、長崎沿岸には有明海(橘湾を含む)と大村湾の二つの局所的な閉鎖個体群が存在することが確認された。また、狭い生息域の中でも極めて沿岸域(距岸1〜2マイル)に分布密度が高く、さらに水深にも分布は影響されていることが明らかとなった。また、本種の胃内容物調査から、本種は小型の水族(魚類・軟体類・甲殻類等)を無作為に捕食していることが伺がわれ、このような食性も分布の偏りに影響を及ぼしていると考えられる。 平均生息密度は有明海湾奥部で高く、湾口部・橘湾へと移るにつれて低下している。大村湾ではその橘湾と同程度かそれ以下であり局所的な閉鎖個体群として今後生存していくことが可能か否か疑問視される。 このように大村湾では発見頻度が極めて低かったため、季節的な移動について明らかにすることは出来なかった。しかし、有明海では季節的な移動が認められた。即ち、春から秋にかけて有明海湾奥部への集中が見られ、秋から冬にかけて湾口部さらには橘湾への分散が見られた。これは全体が移動するというのではなく、分布の中心は湾奥部に見溜り、一部の分布範囲が拡大するように考えられる。また、4〜5月にかけて群サイズが最大となることから、この移動は生殖と密接な関係があることが伺がわれる。漂着個体や刺網に混獲された標本のうち出生直後と思われる個体(体長70〜80cm)の捕獲場所はすべて湾奥部から中央部にかけてであり、橘湾での発見例がないこと、更に諌早湾での出産途中の目撃例等から、本種の分娩海域も湾奥部にある可能性が強い。 標本数が少ないため、正確な成熟年令や体長を求めることは出来なかったが、集まった標本の内、最小の成熟個体は雄で5才(体長138.5cm)雌で9才(体長146.0cm)であった。
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